サ高住・有料を「ナーシングホーム化」 ~取り組み1年のH社事例~

2024年7月22日配信

カテゴリ:
入居施設 介護 サ高住

「サ高住に住んでいる方が重度化してきた」
「平均介護度が上がってきている」
「従業員の給与や光熱費など支出は増える一方で売上・利益は増えない」

船井総研では「ナーシングホーム」のセミナーを定期的に開催していますが、参加者からいただく声です。
どの地域でも起きている「施設業界の現状」だと感じています。

実際、サ高住の「ナーシングホーム化」に取り組んでいるH社が始めたきっかけは、
入居者の加齢に伴う介護量の増加、病気の進行、症状の悪化など医療処置が必要になったことが理由でした。

周りは同じようなサ高住や有料老人ホームが多く、後発施設は料金が安く比較で負けてしまう経験もしています。
「このまま今の体制で運営を続けていけばいずれ立ち行かなくなる・・・」と実感していました。

全国的に増えている「ナーシングホーム」ですが、
建築費高騰や人手不足の影響もあり
既存のサ高住や有料老人ホームの「ナーシングホーム化」が急増しています。

そこで、
・どのように実施しているのか(手順)
・どの程度時間が掛かるのか(期間)
・どのくらい結果が出ているのか(効果)
について、1年前から取り組んでいるH社の内容を紹介します。

取り組みの方針と方法

H社の運営するサ高住の1年前の状況と(現在)です。
【規模】28名定員 (変更無し)
【稼働率】70-75% (85-90%)
【介護度】平均2.1 (平均2.8)
【家賃等】家賃・食費・共益費等々込みで14万円 (変更無し)
【サービス】訪問介護、訪問看護、デイサービス (変更無し)
【売上】100万円/月の赤字 (150万円/月の黒字)
【利益率】- (16%)

職員へのヒアリングと周辺施設の環境を確認し、取り組みの順番・方針を大きく4つに定めました。
①稼働率を高める
②入居者の条件を絞る(基本は介護度3以上のみ受入れ)
③介護サービスを適正化する
④医療処置を行う(必要な入居者を集客する)

※訪問看護は実態として看護としての機能は果たせていなかったため、新たに採用しながら進めました。

取り組みの主な内容です。
①稼働率を高める
細かな手法ではなく職員の意識改革が主でした。相談は毎月発生しているため稼働率の目標値を定めて追客を徹底。「忙しくて営業には行けない」と訪問営業は進まなかったため定期的なFAXによって集客数を増やしました。

②入居者の条件を絞る(基本は介護度3以上のみ受入れ)
今までは「入居希望者」であれば概ね受け入れていました。重度者には消極的で断ってきた過去もあるため、周りから「軽度者が入る施設」だと印象を持たれていたためFAXや電話にて方針転換を伝えていきました。

③介護サービスを適正化する
例えば夜間のオムツ交換など、実施していたのに算定していないサービスが多く蔓延していた「無償サービス」の算定を行いました。介護度が適正ではない方にはCMへ相談しながら区分変更やプラン変更を依頼し、必要なサービス量を調整できました。

④医療処置を行う
これまでは准看護師が多く連携医師への連絡または直ぐに緊急搬送していたことも自社の訪看で対応するようにしました。看護師採用が少数からスタートしたため日中のみのサービス提供になりましが、「予防」の視点を持ちながら徐々に医療対応の機会が増えてきました。

得られた結果と現場に起きた変化

H社のサ高住を「ナーシングホーム化」する取り組みが開始して1年。
開設から数年間赤字だった施設は黒字化を達成。
現場に漂っていた悲壮感が無くなったことは大きな前進ですが、始めの半年間は我慢の期間でした。

①~④を愚直に実施、毎月の変化を管理者達とミーティングしながら一つ一つ判断、実行へと移しての繰り返し、
潮目が変わったのは黒字が見えた時です。
現場が結果を実感したことで行動にも自信を持てるようになりました。
そこからは全体が前向きになり自主的な行動も増えて良い循環になっています。

今の課題は看護師の増員と医療対応レベルの強化です。
日中の看護体制ではどうしても受け入れられる入居者の幅が狭くなります。
より地域に必要とされる、施設が選ばれるためように”進化”するためには夜間対応は欠かせません。
医療保険売上と利益の増加も見込めるメリットがあり、ここから1年で伸ばしていくポイントです。

取り組むと決めた時に、スタッフには面談と全体会議で方針転換を発表しています。
不安そうだった介護職員も離職ゼロで進めてこれました。
「大変です」と聞かれる一方、処遇改善加算による給与還元などスタッフにとっても良い結果が得られているからでしょう。

経験上ですが、稼働率が100%と施設は①は不要ですが、②③は伸びしろがある施設が多いと感じます。
H社のように「ナーシングホーム化」となれば④のみを考えがちですが、連動していることも多いので一緒に見直してみることがお勧めです。

施設の状況によって目指す姿への移行速度は異なりますので、
既存施設の「ナーシングホーム化」を検討している方は是非経営相談を活用してみてください。

【視察ツアー】週休3日制ナーシングホーム2024


◆日程
2024年11月10日(日)13:00-17:00

◆場所
茨城県水戸市(東京駅から特急で約85分)
講座会場:BIZcomfort水戸(JR水戸駅直結1分)
視察先:ナーシングホームとうはら、ナーシングホームほしぞら
※移動は参加者全員で行います。

この記事を書いたコンサルタント

久積 史弥

理学療法士として病院、介護会社の責任者を経験した後に船井総合研究所に入社。前職では訪問看護事業の営業、看護師・理学療法士など約30名のマネジメントに従事、高収益事業として組織を牽引した実績を持つ。 現在は、介護・医療・保険外と幅広い領域でコンサルティングを行う。新規事業の立ち上げの経験が豊富であり、資格者採用・育成による組織活性化、営業による顧客獲得を得意とし、事業推進の手腕に定評がある。

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