最近、「看取り事業」の過剰(不正)請求問題を報道で目にします。
「ホスピス」「ナーシングホーム」など呼び名が様々な事業ですが、「看取り事業」を担当するコンサルタントとして危機感を抱いています。
そこで、本コラムでは私達がコンサルティング現場で見て・聞いて・感じてきたについてお伝えします。
「看取り」事業の実態
報道の内容はホスピスで働いていた看護師へのインタビューが含まれています。
制度的な課題にも触れていますが、以下まとめです。
・複数の運営会社で不正、過剰な請求をしている
・(インタビューを受けた看護師の働いていた会社では)営利が優先的であると感じた
・一般の大手介護会社より高い利益率を上げている
・通常1~3割の医療費負担が、難病等だと負担が一定額にとどまる制度があり患者側が負担を感じにくいという制度上の課題もある
・現在の「出来高払い」から「包括払い」へ変更すべきという提案も出ている
このような報道が増えたことで、
最近はコンサルティングの場で必ず話題に挙がりますし、現場にいる職員の不安は高まっています。
もちろん、看取りを中心に行っている施設の全てが該当しているわけではなく、一部のことだと思いますが報道の影響力を感じます。
正直なところクライアント企業様から「近隣施設で怪しいところがある」と聞いたこともあります。
当然このような報道が起こることも想定していました。
だからこそ我々は「正しい戦略の下に運営していきましょう」と話し合います。
「看取り」事業の進むべき方向
報道によって誤解が生じてほしくないことは「看取りを積極的に行う施設の存在は必要」だということです。
特に介護度の低い入居者が多い施設では、状態が悪化した高齢者へ十分な対応を行うことが難しいこともあります。
夜間含め体制が不十分、職員の人数・経験値が乏しい、などいくつか理由はありますが、状態が悪化すればすぐに病院へとなり看取りができない施設も多いのです。
今は「病院から在宅へ」の流れがあるため、看取り期を行う施設は退院後の受け皿となるのが本来の姿でしょう。
クライアント様のナーシングホームでは、
「入居中の施設では看取りができないので転居先を探しています」といった相談も多く
現場を知れば知る程に社会的に必要な機能だと実感します。
報道の背景として、高収益や高利益に魅力を感じた事業参入者の急増があると思います。
内容や質が伴わない会社・施設が増えたことで起こった問題です。
施設規模や地域ニーズ、法人内の役割・相乗効果、職員への待遇還元など総合的に考える必要はありますが、
我々が行う提案は、報道された施設のように高収益が得られる「医療保険の患者しか受け入れない」と限定するのでなく、
より広く「介護ケアのみの重度者や医療依存度の高い患者を受け入れる」ことです。
また、「施設だけでなく在宅」まで中長期では取り組んでいくことが今後は必要でしょう。
そして看護だけではなくリハビリなど総合的な展開を視野に入れて運営していくことが求められています。
実際にこれらは地域密着型で堅実に経営されている看取り施設は既に取り組んでいる内容です。
報道されている内容とは異なる運営実態があることも知っていただければと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
「看取り」事業について、先行して「在り方」を示して下さっている企業様も多く存在します。
質が伴ったより良い施設づくりを目指していただくため、船井総研ではセミナーを定期的に開催しています。
オンラインでも視聴できますので、ご都合の良い日程を選択・ご参加ください。
【視察ツアー】週休3日制ナーシングホーム2024
◆日程
2024年11月10日(日)13:00-17:00
◆場所
茨城県水戸市(東京駅から特急で約85分)
講座会場:BIZcomfort水戸(JR水戸駅直結1分)
視察先:ナーシングホームとうはら、ナーシングホームほしぞら
※移動は参加者全員で行います。
この記事を書いたコンサルタント
久積 史弥
理学療法士として病院、介護会社の責任者を経験した後に船井総合研究所に入社。前職では訪問看護事業の営業、看護師・理学療法士など約30名のマネジメントに従事、高収益事業として組織を牽引した実績を持つ。 現在は、介護・医療・保険外と幅広い領域でコンサルティングを行う。新規事業の立ち上げの経験が豊富であり、資格者採用・育成による組織活性化、営業による顧客獲得を得意とし、事業推進の手腕に定評がある。