2024年は障害福祉・介護・医療のトリプル改定の年です。
その中でも注目すべきキーワードに「看取り」と「医療ケア」があります。
事業の多角化を考えこれから介護へ参入したい方は制度が変わるこのタイミングが最大のチャンスだといえます。
本記事では介護業界の時流と制度改定を見据えて参入すべき事業を紹介します。
介護の市場状況 ~伸び続ける市場なのか?~
介護のイメージは「人手不足」、「儲からない」など課題が先行してしまうことが多いかもしれませんが、市場は拡大し続けています。
内閣府の「令和3年高齢者白書」によると令和3年10月時点で65歳以上人口は3,621万人、高齢化率は28.9%になり、この20年で2倍以上になっています。
総人口が減少している中でも高齢化率は今後益々高まっていくことが予想されます。
当然ながら、「要介護者」といわれる介護が必要な高齢者も増えていく見込みです。
介護の中で特に伸びている業態とは
結論からいえば、伸びている業態とはサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)や有料老人ホームといったいわゆる「高齢者向け住まい・施設事業」と介護・医療が必要な方の自宅へ訪問して看護ケアを行う「訪問看護事業」の2つです。
①高齢者向け住まい・施設事業
2020年の国土交通省による資料から、サ高住は令和2年11月末時点で全国7,735棟があり、制度創設から10年が経過していますが施設数は増加し続けています。
②訪問看護事業
公益財団法人日本訪問看護財団の調査結果によると、訪問看護ステーションは2010年の5,731か所から2022年では約2.5倍の14,304か所へ急増しています。
どちらも高齢化や一人暮らし高齢者の増加、夫婦のみ世帯の増加など社会的な背景が影響し、需要が拡大していることを考えます。
新規参入へのベストな方法
それぞれに新規参入するのも良いのですが、実はこの2つの事業へ同時参入する方法があります。
両方の良いところ取りをした「施設×訪問看護」、通称「ナーシングホーム」事業です。
各メディアで掲載されるなど注目度が高く近年全国的に増えています。
通常のサ高住や有料老人ホームでは受入ができない介護度の高い要介護3以上の高齢者が入居し、訪問看護サービスを付加することで介護から医療、看取りまで包括的に行う施設モデルです。
ナーシングホーム事業のメリットは大きく3つ
①需要の拡大に対して供給量が圧倒的に少ない
2020年時点では、訪問看護が併設(隣接)しているサ高住や有料老人ホームは9%しかありません。ほとんどが重度者や医療ケアの受入が難しい状態です。
対して、ナーシングホームは他施設では提供できない看護ケアが行えるため病院を退院した後に自宅へ戻れない人、他施設で受入ができなかった人、いわゆる「医療難民」の受け皿になります。
入居者は65歳以上の死因別で第一位となる悪性腫瘍(がん)の人が多いことからも需要の大きさが想像できます。
②医療保険による売上が発生するため、介護保険だけに依存しない
訪問看護では末期の悪性腫瘍など特定の疾患や身体状況を抱えた入居者へのサービスは医療保険による算定が優先されます。
そのため、ナーシングホームでは介護保険だけに依存しない施設経営を行えます。
報酬改定により売上減を経験してきた介護事業者にとっては特に魅力的なポイントでしょう。
③専門職の採用力が高まり、規模拡大や新しい事業へと発展ができる
ナーシングホームは名前の通り看護師を雇用する必要があります。介護業界において採用力は企業力といっても過言ではありません。
事業を進めるにあたり看護師の採用ノウハウが蓄積し、2棟目、3棟目へと展開、あるいは他事業へ発展していくことも十分可能です。
収益構造とポイントの理解
介護保険の構造として、重度者への対応は単価が高く、かつケアの頻度が多いほど売上が上がります。
ナーシングホームでは、重度者または医療ケアが必要な高齢者が入居するため、通常のサ高住、有料老人ホームでは成しえない収益を生み出すことができます。
介護保険に加え医療保険売上も加算され顧客単価が100万円以上になる事例も存在します。
おわりに
介護業界は今後も成長し続ける市場です。しかしながら介護保険による売上だけに依存した状態ではいずれ限界を迎えてしまうでしょう。『ナーシングホーム』は介護でありながら医療保険の報酬(売上)を得られる限られた業態です。病院から在宅への流れが進んできたことを考えれば、介護業界において益々伸びていく業態だといえます。
本記事を読み、ナーシングホームに興味を持った、介護保険に依存しない事業に参入したい、そのような方々におススメなセミナーが 『ナーシングホーム転換セミナー』 です。(6/6(火)13:00~16:00 船井総合研究所 東京本社開催)
高齢者向け・障がい者向け施設など施設経営されている方向けの内容が主体になりますが、ナーシングホームのビジネスモデルや参入方法を知る機会としてもご活用ください。
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【日時】
2023年11月11日(土)13:00-16:00
【開催場所】
東京会場
この記事を書いたコンサルタント
久積 史弥
理学療法士として病院、介護会社の責任者を経験した後に船井総合研究所に入社。前職では訪問看護事業の営業、看護師・理学療法士など約30名のマネジメントに従事、高収益事業として組織を牽引した実績を持つ。 現在は、介護・医療・保険外と幅広い領域でコンサルティングを行う。新規事業の立ち上げの経験が豊富であり、資格者採用・育成による組織活性化、営業による顧客獲得を得意とし、事業推進の手腕に定評がある。