介護報酬が全体で0.54%引き上げと昨年発表になりました。
この発表を受け、安心した方もいるのではないでしょうか?
しかし、本当に介護保険報酬は引き上げになるのでしょうか?
前回の2015年介護報酬改定では、全体で-2.27%でした。
前回の報酬改定では、ご存知のように処遇改善加算分を含めて-2.27%という改定が行われました。
今回も同じように処遇改善加算等も含めて0.54%の引き上げとなります。
政府は、介護業界の人材の確保と処遇の改善に力を入れております。
消費税の増税のタイミングと合わせて、勤続10年以上の介護福祉士には月8万円と支払うということで調整を進めています。
合わせて、10年以下の介護福祉士やその他の職員についても処遇改善を行っていくことを見据えています。
そのことを踏まえて考えると、一概に「基本報酬」が引き上げられるとは言えません。実質マイナス改定となる可能性があるのです。
ですから、全体として0.54%引き上げられても収支がプラスになるとは残念ながら言えないのです。
ただし、基本報酬の改定率については業態ごとに状況が異なると私は考えています。
業態によっては引き上げられるものもあると思われます。
なぜならば、サービスの維持を踏まえたときに報酬をプラスにした方がいいもの。
または、国が積極的に展開したいサービスについては、報酬が引き上げられる可能性があるからです。
ですから、「全体がどうなるか?」ということよりは、各業態が介護保険料に占めている割合と財源を踏まえて、実施している業態が介護報酬を引き上げたとき、または引き下げたときにどれくらい国の財政面と市場にインパクトを与えるか?いうことに着目して読み解いていく必要があります。
1つ例をお伝えします。既に厚労省から発表になっている介護経営実態調査を見ると特別養護老人ホームの平均の営業利益率は1.6%(社会福祉法人の平均)です。
しかし、デイサービスの大規模IIの平均の営業利益率は10%となっています。
この利益差を見ると、当然ながら特養とデイサービス大規模IIの報酬を近い数字で改定するということには無理が生じます、実際に、厚労省の介護給付費分科会の資料の中にもデイサービス大規模IIの報酬については検討すると明記されています。
これは、小規模や通常規模のデイサービスに比べるとスケールメリットが働くとは言えども、利益が「出すぎて」しまっているという判断なのでしょう。
現在の財政状況と少子高齢化を踏まえると介護保険制度を維持し、サービスを継続するのは大きく基本報酬を引き上げることは難しいと言えます。
つまり、全体としては引き上げると発表になりましたが、業態によってはまたも厳しい改定になると言えるでしょう。
介護報酬が引き上げられることに安心するのではなく、業態別にどうなるか?を検討し、引き下げられる可能性が高い業態についてはまずは売上アップの施策を検討して頂きたいと思います。
経営研究会のご案内
介護サービス経営研究会《無料お試し参加受付中》
月づきたったの2万円!「地域一番」をホンキで目指す介護事業者のための実践的なグループコンサルティングサービス!必ず答えが見つかります!
今回の担当コンサルタント
介護・福祉グループ グループマネージャー チーフ経営コンサルタント
沓澤 翔太(クツザワ ショウタ)
デイサービスセンター、小規模多機能型施設、特別養護老人ホーム、高齢者住宅などの新規開設、収支改善、異業種からの介護事業への新規参入支援などを手がける。現在は、デイサービスや高齢者住宅の利用者獲得や新規開設を中心にコンサルティングを行っている。介護事業所のコンサルティング以外にも訪問診療の集患や介護食の販売コンサルティングなど介護事業所と関連する企業へのコンサルティング実績もある。