2021年(令和3年)介護報酬改定【まとめ解説】

2021年2月23日配信

カテゴリ:
介護

2021年に実施される介護報酬改定について、介護事業の経営コンサルタントが全体の方向性、経営への影響、取り組むべき実施策を解説します。

報酬改定の方向性

2021年の介護報酬改定では5つの方向性が示されています。
一つが感染症対策の強化です。そして地域包括ケアシステムの推進。自立支援・重度化防止の取組の推進。介護人材の確保、介護現場の革新。最後に、制度の安定性・持続可能性の確保です。
基本的には2015年以降の報酬改定を踏襲した内容となっていますが、④では現場の「革新」という表現が使用され、新たな運営方法の確立を目指すという国の強い意思を読み取ることができます。

基本報酬と加算

基本報酬について、コロナ対策ということで、2021年9月までは全ての業態で0.1%上乗せされることが発表されております。0.1%を大きいとみるのか小さいとみるのかは事業者によると思いますが、基本的に固定である介護報酬に僅かでも上乗せされる決定は前向きに受け取るべきだと考えています。経営上重要なのは、この半年間で利用者の最大化を図り、収益を最大限得られる体制にするということです。
単位数自体は、全体として大幅な変更はありません。若干下がっている業態もありますが、ほとんどの業態において現状維持もしくは微増となっています。

加算・減算については、変更や新設が多くなっています。例えば入浴加算について、これまでのやり方を続けると50単位から40単位に減少することとなります。逆に増加している加算は、前回の改訂で新設されたADL加算です。新設加算については、その対応や体制について推進したいという国の方針ですから、ぜひ取得できるものは取得して頂きたいと思います。
加算は、「国がどのような方向性でこの介護報酬を考えてるのか」、「介護保険制度を維持するために何を考えているのか」を示すメッセージとしても重要な情報です。取得を検討するのと合わせて、どういった加算が新設されているのか、また何が減算になっているのかを見ていただきたいと思います。

報酬改定を受けた具体的な実施策

具体的な取り組みは稼働率(入居率)の高さによって異なります。
稼働率が高い事業所では、国の方向性を踏まえて、加算の取得が重要となります
逆に稼働率が低い事業所では、加算の取得ではなく利用者の獲得が先決です。客単価を上げるということではなく、利用者の確保に注力して下さい。現場が「どちらもやれる」ということなら問題ありませんが、稼働率が上がらない事業所の多くは、「営業に行けない」とか、「労働力に制限がある」状態だと考えられます。その場合は、加算の取得ではなく稼働率を上げることに労働力を割くべきです。
複数の事業所を運営する法人では、本部または本社から一括で、「当該加算を取得するように」と発信することもありますが、労働力に限りがあることを踏まえると、加算取得と稼働率向上のどちらを優先すべきか、事業所ごとに戦略を分けることが望ましいと考えられます。

CHASE・VISIT情報の収集、活用

情報収集を進め、科学的に介護を行いたいという取り組みがCHASE・VISITです。私見では、向こう3年間で大きな進歩はないと考えていますが、やらなければならないことだということと、推進していくんだという明確なメッセージが国から発信されています。次回の改定の際にはより突っ込んだ内容になると予想されるため、次の3年間は2024年の4月以降を見据えて、情報の収集と活用に取り組むことが重要です。
また、会議や多職種連携におけるICTの活用も、業態に関わらず推進することが求められます。これに取り組むには、まずは記録の電子化から始めましょう。多くの事業者で、まだ記録の電子化が進んでいませんが、会議や多職種におけるICTの活用を推進するには記録の電子化がマストです。そのためには、まずはWiFi機器などの通信環境を整えること。特に通所や訪問は施設より整備が遅れているため、通信機器の導入から始めるケースが多くなると思いますが、記録の電子化は業態に関わらず必須ですので、ぜひ取り組みを進めて頂ければと思います。

解説の続きは報酬改定解説レポートに記載しています。
フリーダウンロードとなっていますので、ぜひご活用ください。

この記事を書いたコンサルタント

沓澤 翔太

デイサービス、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの新規開設、収支改善、異業種からの介護事業への新規参入支援などを手がける。現在は、主としてデイサービスや有料老人ホームの利用者獲得や新規開設を中心にコンサルティングを行っている。 介護事業のコンサルティングの他、療養病床の転換や訪問診療など、医療業界のコンサルティングや、医療器具の販売促進についても実績を持つ。

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