新規事業や出店を検討する際気になるのはエリアの競合環境です。特に訪問看護ステーションは、近年著しく増加したことで「出店の意向はあるが、既に多すぎるのではないか?」と不安視される方も少ないことと思います。今回のコラムでは都道府県別の訪問看護ステーション設置状況から、エリア展開の考え方についてお伝えいたします。
訪問看護ステーション日本一の激戦区はどこ?
一般社団法人全国訪問看護事業協会の「令和4年度 訪問看護ステーション数 調査結果」によると、調査時点で全国の訪問看護ステーション数は14,304件で、最も多く設置されているのは大阪の1,634件となっています。次いで東京の1,427件、愛知の916件と続きます。ワーストは、山梨の69件です。
訪問看護の主の利用者層となる高齢者人口千人当たりで見ると最も設置が多いのは、大阪で0.69件。和歌山が0.57件、福岡が0.54件と続きます。最も少ないのは、秋田で0.21件。次いで山梨が0.22件、新潟が0.23件です。グラフで見ると分かりやすく、医療費同様に西高東低の傾向を示しています。普及率という観点では最も大阪が先行しており、最も競争環境が激しいエリアと言えます。
休止と休止率(届出に対する休止の比率)を見ると、最も休止率が高いのは岩手で7.44%。次いで熊本が7.07%、鹿児島が6.63%となっています。休止は訪問看護ステーションの稼働数が多い都道府県が当然多くなっていますが、休止率は人口との相関や西高東低といった傾向はみられません。
日本一競争環境が激しいと言った大阪は1.63%で、全国的に見て決して高い数値とはなっていません。また、大阪の直近10年の訪問看護ステーション設置状況を見ると、新規開設のペースは加速する一方で、廃止・休止数は横ばいで、2017年以降はは廃止・休止数が減少傾向となっています。
以上のことから、訪問看護事業においては、競争環境の厳しさと経営環境の厳しさが必ずしもイコールでないことが考えられます。本コラムではマクロな統計に基づく考察を行いましたが、市区町村単位での調査や分析をご希望の方は個別にご連絡ください。
船井総研では市場調査に加えて、マーケティングやリクルーティング等の戦略立案や実行支援のコンサルティングを行っています。訪問看護ステーション開設や事業活性化をご検討の際は経営相談窓口よりお問い合わせください。
※出所:一般社団法人全国訪問看護事業協会調査、2020年国勢調査
この記事を書いたコンサルタント
津田 和知
大手介護事業者の介護付き有料老人ホーム施設長を経て、船井総合研究所に入社。前職の経験を活かし、現場主義で問題の本質や改善の糸口を掴み、経営者のサポートを行う。コンサルティング領域は、介護施設の立ち上げや収支改善、訪問看護ステーションの立ち上げ、人事制度構築など。