老健を救う、2024年診療報酬改定

2024年4月5日配信

カテゴリ:
保険制度改定 介護


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2024年は医療・介護・福祉の報酬改定が重なる“トリプル改定”となりました。 介護事業を経営される皆様におかれましては、 介護報酬改定の内容を一通り確認されたという方も多いかと思います。 介護事業の中でも病院からの受け入れが多い事業につきましては、 介護の川上に位置する医療業界での報酬改定についても、 気になっていらっしゃる方は多いかと思います。 今回は2024年診療報酬改定の内容から、 老健の環境を大きく変える改定をピックアップしてお伝えしていきます。

2024年介護報酬改定で、老健が病院の在宅復帰先に復活!

 2024年診療報酬改定で、地域包括ケア病棟の在宅復帰基準が変わります。 2018年改定で老健は地ケア病棟の在宅復帰先から外されてしまいました。 ところが、今回の改定で再び老健は地ケア病棟の在宅復帰先となることになりました。 具体的には強化型以上の老健であれば、地ケア病棟から退院した人数の半分が、 病院の在宅復帰の計算にカウントできるようになるという改定です。 一方で強化型未満の施設については、これまで通り在宅復帰先とはなりません。 在宅復帰支援に取り組む老健かどうか、がこれまで以上に病院からの入所者獲得に影響するということになります。  加えて、今回の診療報酬改定で新たに“地域包括医療病棟”という区分が登場します。 平たく言えば急性期と地ケアの間に位置するような病棟区分です。 趣旨は「高齢者急性期を主な対象患者として、治す医療とともに同時に支える医療(リハビリ等)を提供することで、 より早期の在宅復帰を可能とする。」となっています。 看護配置は「7対1」の急性期よりは少ない「10対1」、地ケアの「13対1」よりは多い配置です。 この病棟に求められる在宅復帰率は地ケアの72.5%よりも高く80%となっています。 この地域包括医療病棟ですが、老健も在宅復帰先となっています。 類型による違いについては、詳細の発表が待たれますが、 強化型以上の老健は在宅復帰先となるとみてよいでしょう。  病院からの入所者獲得においては、今回の診療報酬改定は追い風といえます。 しかしながら、強化型以上の老健であるかどうかという部分は、 安定した運営においてより一層重要度を増した改定となりました。

「加算型で満床でやってこれた」は過去の話

 よく「うちは稼働率も高いし、加算型だからこれでいい」という話を聞きます。 確かに、黒字で運営できている加算型老健は珍しくありません。 しかし医療も介護も、外部環境は報酬改定によって簡単に変わっていきます。 今回の介護報酬改定でも、強化型以上/未満で基本報酬が1人当たり100単位も変わる改定となりました。 100床であれば一か月あたり約300万円、収益が変わってきます。 先述の診療報酬改定も加味すれば、国が老健に強化型以上の算定を求めていることは明白です。 「利益主義で老健をやっているわけではない」という声もよくいただきますが、 今後改定が続いた結果、赤字で事業が閉業してしまっては元も子もありません。 それだけでなく、介護事業においてここまで在宅復帰を求められる施設は他になく、 皆様の老健が在宅復帰支援をしなければ、「自宅に帰りたい」という退院した患者は途方に暮れるでしょう。 介護施設の中で充分なリハビリを提供できるのは老健以外にありません。 事業報酬が税金で賄われる以上、国の意図に沿った運営を行うことこそが、 正しく社会性を果たすことにつながるのだと私は感じています。  ここまでの内容で、理想ばかりいうのは簡単だ と感じている方もいらっしゃるかと思います。 たしかに、現在強化型以上を目指している施設、加算型にとどまっている施設  状況は様々異なっており、施設ごとに個別事情があることは私も重々承知しております。 しかし、基本型からスタートして超強化型まで転換した施設や、 病院やクリニック、他の施設系サービスを持たない単独型で超強化型を算定している施設があることを私は知っています。 皆さんの施設とどこが共通していて、どこが違うのか  視野を全国の老健まで広げて知っていただきたいと思います。

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この記事を書いたコンサルタント

古賀 啓佑

福岡県北九州市出身。久留米大学附設高等学校、横浜国立大学経済学部を卒業後、新卒で船井総合研究所入社。介護老人保健施設・デイケアの経営コンサルティングを専門とする。基本型老健の超強化型転換、デイケアの稼働率向上、収支改善、採用など、老健・デイケアのあらゆる分野での活性化を得意としている。正しい論理に基づく計画完遂と、論理で割り切れない人付き合いの両立を志向しており、クライントと共に粘り強く成長していくことを信条とする。

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