いま中国で注目されている中国版小規模多機能モデル

2020年7月28日配信

カテゴリ:
小規模多機能

皆さん、こんにちは!
本日は高齢化が進んでいる中国で近年とても注目が集まってきた中国版小規模多機能モデルについてお伝えします。

 世界人口の2割を占めている中国。国連の推計によると、2020年には高齢者人口が1.7億になると推計されており、現在中国の介護政策で掲げているのは、北京周辺地域では「9064」、上海周辺地域では「9073」という考え方です。在宅で家族による介護が90%、社区(コミュニティ)での介護が6%(北京周辺地域。上海周辺地域では7%)、施設介護が4%(北京周辺地域。上海周辺地域では3%)というマーケット構造のことを指します。そんななかで近年、中国で特に注目されているのは「社区介護」です。社区介護は日本の地域包括ケアと似た概念で、要介護になっても住み慣れた地域で暮らしていくことを目標とした介護システムです。

 この社区介護の中で参考になっているのが日本の小規模多機能型居宅介護です。日本の小規模多機能は、利用者の選択に応じて、施設への「通い」、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行うサービスとなります。
中国各地域では日本の小規模多機能を参考して、施設を立ち上げています。名称は様々で、「小规模多功能」「社区养老驿站」「日间照料中心」などがあります。ただ、サービス内容は日本とは異なり、地域や事業所によって様々なサービスが提供されていますが、代表的なモデルとして以下のモデルがよく見受けられます。

モデル1:長期入居+通い食堂+訪問介護
このモデルは長期入居の運営で主な収支をカバーし、周辺高齢者向けに通い食堂の提供、使用する毎に請求する訪問介護サービスを提供しております。

モデル2:認知症ケア用長期入居+訪問介護+元気な高齢者向けの無料な活動センター
このモデルは認知症ケア用の長期入居で主な収支をカバーし、使用する毎に請求する訪問介護サービスを提供、施設内に日本のデイサービスのような区域を設けて、周辺地域の高齢者に無料で集会所として提供しております。

このほかにも様々なサービス内容があり、サービスにかかる価格も様々です。中国での小規模多機能モデルは具体的にどんなサービスを提供するのか?ということはまだ定まっておらず、様々な法人が試行錯誤しながら運営をしています。

介護保険制度が充実していない中国において、もっとも難しいことは収益確保です。ある北京の法人はすでに小規模多機能モデルをドミナント展開していますが、一番収益の高い事業所でも営業利益3%~5%程度です。大連にある施設では、認知症ケア向けの長期入居で収益を上げていますが、その他のサービスが赤字のため、利益は出ていません。上海の施設では、市の政策によって家賃免除などの支援を受けることができているので、わずかに利益を出している現状でした。

中国版小規模多機能モデルを成功させるためのポイントは、出店地域の適切な選定、在宅介護をしている家族のニーズに合わせたサービスラインナップ、全額自費の介護サービスを買っていただくためのマーケティングとセールスだと船井総研は分析しています。しかしそれ以前にまだ、小規模多機能モデルは市場に正しく認知されていないので、サービスそのものの認知度を上げるところから始めないといけません。

国がセットアップしたビジネスモデルがあり、介護保険制度を利用して安価に介護サービスが受けられる日本に比べると、中国でビジネスとして介護事業を成立させるにはより高度な経営手腕が求められているように感じます。日本からビジネスモデルや高品質な介護サービスのノウハウを学んだ中国人経営者は多く、彼らは今、そのビジネスモデルのエッセンスや品質を武器に、収益化に向けて中国へのローカライズにチャレンジしているようです。

この記事を書いたコンサルタント

沓澤 翔太

デイサービス、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの新規開設、収支改善、異業種からの介護事業への新規参入支援などを手がける。現在は、主としてデイサービスや有料老人ホームの利用者獲得や新規開設を中心にコンサルティングを行っている。 介護事業のコンサルティングの他、療養病床の転換や訪問診療など、医療業界のコンサルティングや、医療器具の販売促進についても実績を持つ。

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