◢◤看多機開業◢◤メリット・デメリット

2025年3月6日配信

カテゴリ:
小多機・看多機 新規事業

従来型の施設介護から、住み慣れた地域で生活を続けられる在宅介護への移行圧力が高まる中、 看護小規模多機能型居宅介護(看多機) は、その中心的な役割を担うサービスとして、ますます注目を集めています。

2020年に644店舗だった看多機は、2024年には1031店舗まで増加を続けており、病院からの在宅復帰支援の希望や、半日利用で機械浴希望のある方など、採算をとりながら、制度の狭間に落ちてサービス提供が困難な利用者を救済する受け皿として、今後ますます社会に広がっていく在宅サービスの要となる施設形態と言われています。

小多機・看多機の店舗数推移グラフ

看多機は、医療依存度の高い高齢者でも、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、24時間体制で「通い」「訪問介護」「訪問看護」「泊まり」のサービスを組み合わせた、まさに “高齢者のためのオールインワンサービス” です。

「そもそもどのような事業なのか?」
「事業に取り組んだら会社にどのような良い変化が生まれるのか?」
「開業するデメリットにはどのようなものがあるのか?」

この記事では、看多機事業とは何か?についてと、開業のメリット・デメリットをお伝えします。

看護小規模多機能型居宅介護とは?

1-1. 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の概要
看多機は、高齢者が住み慣れた地域で、可能な限り自立した生活を継続できるよう、24時間体制で「通い」「訪問介護」「訪問看護」「泊まり」のサービスを組み合わせ、医療ニーズの高い高齢者を支えるサービスです。利用者は、顔なじみのスタッフから、日常生活の支援、医療的なケア、リハビリなど、包括的なサービスを受けることができます。

施設に通うことで、他の利用者と交流し、 “孤独感” を解消できるのも大きなメリットです。看多機は、単なる介護サービスの提供にとどまらず、 “高齢者の生活の質を高める” ための重要な役割を担っています。

1-2. 看多機のサービス内容
看多機では、利用者の状態や希望に応じて、柔軟にサービスを組み合わせることが可能です。

通い: デイサービスの機能です。
施設に通い、食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受けられます。
栄養バランスの取れた食事を提供することで、 “健康維持” をサポートします。
レクリエーションや趣味活動を通じて、 “心身の活性化” を促します。

訪問: 訪問看護・訪問介護の機能です。
スタッフが自宅に訪問し、必要な介護や医療サービスを提供します。
服薬管理や健康チェックなど、 “医療ニーズ” にも対応します。
住環境の整備や生活指導など、 “在宅生活を支える” ためのサービスを提供します。

泊まり: ショートステイの機能です。
夜間や緊急時に、施設に宿泊することができます。
家族の “介護負担軽減” にも繋がります。
普段からなじみのある施設で、 “安心・安全” な環境を提供できます。

これらのサービスを “シームレス” に提供することで、利用者の生活を切れ目なくサポートし、 “在宅生活の継続” を支援します。

これにより
・老々介護だけどできるだけ在宅が良い。不安定な時は泊まれて緊急時は駆けつけてほしい
・デイサービスは決まった時間にしか送迎がなく、利用するのが難しい。柔軟性が欲しい
・退院支援として最初は泊りベース、そのあと通所・訪問を増やして在宅復帰したい
・通所介護の帰りに、買い物にどこか寄ってもらってから帰宅したい
・機械浴を半日利用で提供してほしい
・小規模多機能を利用しているが、介護度があがってきて医療提供もしてほしい
・施設か在宅かの2択じゃなく、併用して在宅での看取りをちゃんとサポートしてほしい

というような、他のバラバラの介護サービスでは提供が困難なニーズに対して、ワンストップだからこそ柔軟に対応できることが大きな特徴です。

1-3. 看多機の市場規模と成長性
高齢化の進展に伴い、看多機の市場規模は拡大傾向にあります。厚生労働省の調査によると、看多機の事業所数は年々増加しており、2024年には 1,000事業所 を突破しました。毎年100施設ほどが新たに誕生していますが、十分に整備されているとは言い難く、さらなる事業所整備が進む成長市場として注目されています。

これは、次の三つの社会的背景によるものです。

高齢化の加速:2035年には、65歳以上の高齢者人口が 3,700万人(総人口の1/3)になると予想されています。
在宅医療へのニーズの高まり:高齢者の多くは、 “住み慣れた場所で最期まで過ごしたい” と考えています。
地域包括ケアシステムの推進:病床数の削減や在宅復帰の促進など、病院だけではなく地域全体で高齢者を支える体制づくりが進められています。

看多機は、 “超高齢社会における重要なインフラ” として、その役割はますます大きくなっていくでしょう。

1-4. 今後の展望と課題
看多機は、地域包括ケアシステムにおいて “要” となるサービスとして、今後ますます需要が高まると予想されます。
下記の課題を克服し、 “持続可能なサービス提供体制” を構築していくことが、看多機の立ち上げを成功させる鍵となります。

人材不足:介護業界全体で人材不足が深刻化しており、看多機においても、看護師や介護職の確保が大きな課題となっています。
スタッフ教育:中重度者が在宅で暮らせるよう、通い・訪問・泊りの最適な組み合わせ方を提案するアセスメント力が求められています。
認知度が低い:看多機をどう使えばいいのかということは、たとえ自社のケアマネジャーでも、よくわかっていないこともあります。

看護小規模多機能型居宅介護を開業するメリット・デメリット

2-1. 開業のメリット
2-1-1. 地域貢献度の高さ
看多機は、地域の高齢者が住み慣れた場所で暮らし続けられるよう支援する、地域貢献度の高い事業です。他の業態では、応えられないお悩みにも対応することができ、制度の谷間に落ちてしまった利用者やその家族から、感謝の言葉を直接受け取ることも多い仕事と言えるでしょう。

地域に根ざした事業を展開し地域社会へ貢献することは、 “企業の社会的な責任” を果たすことにもつながります。

2-1-2. 収益性の高さ
看多機は、中重度の方へワンストップでサービス提供を実施するため、収益性と社会性を両立できる事業となっています。利用者一人当たりの単価が25~30万円と高く、例えば登録者25名で月商650万円・年間の営業利益845万円という数値の施設もあり、資金繰り的にも持続可能な経営が可能です。

2-1-3. 経営の安定性
地域の病院や老健と密に連携して退院支援を提供する事業であることや、地域の居宅・包括で対応に困っている困難事例の受け皿になる事業であるという特徴のため、安定した経営基盤を築きやすい事業です。また、地域からの信頼を得られることや、早期の顧客接点を持てることが、更なる経営の安定化に繋がります。

2-2. 開業のデメリット
2-2-1. 初期投資の大きさ
一般的に老人ホームなどの施設を開業するには、施設の整備や設備投資など、多額の初期費用が必要となりますが、看多機の場合は補助金や居ぬき物件の提供などの公的サポートを受けられるケースが多いです。

具体的にかかる金額例としては、運転資金2000万円と土地代2000万円で、トータル4000万円の初期投資が必要となるなどの事例があります。当然、賃貸で始めれば初期投資額を抑えられるなどがあるので、公募条件の要件によって変動します。

2-2-2. 人材確保の難しさ
看多機では、看護師や介護職など、専門性の高い人材が必要です。しかし、介護業界全体で人材不足が深刻化しており、優秀な人材を確保することは容易ではありません。

一方で複数の介護事業を展開している法人でアンケートを取ると、「一番仕事が面白いのは看多機!」となるケースも多いのが本業態です。
まだ求職者からの認知度が低い事業ですので、人気業態に選ばれる”職場”としての看多機の良さを求人原稿へ反映し、求職者へ発信していくことが求められます。

2-2-3. 運営の複雑さ
看多機は、「通い」「訪問介護」「訪問看護」「泊まり」のサービスを組み合わせて運営するため、他の介護サービスに比べて運営が複雑です。そのため、多岐にわたる業務を効率的に管理するノウハウが必要となります。

いかがでしたでしょうか?
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ぜひご覧ください。

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【講座内容】

第1講座
看多機の今がわかる!ビジネスモデル&時流解説
▶介護だけでは生き残れない!?国が求める「地域に必要とされ続ける」在宅介護サービスの在り方とは
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▶黒字化できるの?看多機の経営実態と収益化のポイント
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第3講座
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▶早期黒字化!登録者数を増やすための集客活動のポイントやツール例
▶看多機を適正人員配置で運営するための運営方法とポイント

第4講座
本日のまとめ
セミナーのまとめと明日から取り組んでいただきたい事をお伝えします。

看護小規模多機能 時流予測レポート2025


【目次】

1.看護小規模多機能の現状
看護小規模多機能の事業所数が増加している現状と、その背景にある独居・老々介護世帯の増加について解説。
高齢者支援が病院中心から在宅中心へ移行していること、及び、より手厚い介護が必要な高齢者が増加している現状を説明。

2.看護小規模多機能の需要予測
2040年にかけて看護小規模多機能の需要が大幅に増加するという予測について解説。
中重度者の人口増加に伴い、看護小規模多機能の需要が高まる見通しについて紹介。

3.2025年 実施いただきたいこと
看護小規模多機能の立ち上げ、収益化、事業拡大のために、2025年に実施すべきことについて解説。

4.具体的な取組み
認知度アップのための具体的な取り組みとして、退院支援や困難ケースへの対応について紹介。
既存利用者へのサービス量の適正化と、新規利用者の獲得について説明。
単価アップのために、各種加算の算定や中重度者の受け入れが重要であることを解説。

5.事例
全国の成功事例を紹介し、それぞれの法人がどのように看護小規模多機能を経営しているかを解説。
これらの事例を通して、在宅介護事業の売上向上や、病院と介護を繋ぐ拠点としての役割について説明。

この記事を書いたコンサルタント

武藤慶太郎

介護、歯科医療、人材紹介、地方創生等の業界を経てシニアライフコンサルティングチームに所属。新規事業開発の経験が豊富であることを特徴とするコンサルタントであり、現在に至るまで50社以上の公的介護・医療保険外事業の新規開設や、デイサービス・訪問看護・小多機/看多機の立ち上げに携わる。マーケティング戦略に強みを持ち、中でも「Webマーケティング」においては業界問わず定評があり船井総合研究所自体のWebマーケティングも担当している。戦略立案から、具体的な広告戦略、サイト改善までWeb全般のサポートを行う。

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