「一億総活躍社会」の到来が「介護施設の損益」に与える影響
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こんにちは、施設介護チームの沓澤 翔太です。
一億総活躍社会の実現に向けて、さまざまな施策が実行されています。介護業界においては特に、子育てをしながら働ける環境をつくる託児所の整備、障がいをお持ちのお子さんがいても働ける環境をつくる障がい児(者)事業への参入などの経営多角化を推進されている法人様もよくお見受けするようになりました。あるいは、残業や休日出勤を抑止するためのシステム導入や労務管理の推進、良好なワークライフバランスを保つための有給取得の推進、さらにはダイバーシティを推進するための労働環境の整備も進んでいるようです。そうした取り組みによって、これまで取り込むことのできなかった人材の確保に成功をしている法人様も頻繁にお見受けするようになりました。
少子高齢化がますます進む不安な時代のなかで、明るい兆しが見えてきているように思いますが、一億総活躍社会の実現によって起こる新たなリスクへの対応を今のうちから整える必要があると考えています。
失業率が下がり、有効求人倍率が上がっていったときに起こるのは、「給与単価のベースアップ」という問題です。労働者にとって、同じ仕事なら、お給料は高いほうが良いので、求人媒体に掲載する給与単価の吊り上げが地域内で起こっていきます。それに伴い、既存スタッフの給与単価の見直しも行なわれることになるのです。売上が上がったことによる給与単価のアップではありませんので、事業者にとっては単純な利益減となり、各法人の根競べ状態に陥っていくのです。
人事評価制度が適正に運用されていない法人は、すでに各スタッフの「活躍」と「給与」とのバランスが崩れていますから、給与のベースアップによって他法人より明らかに悪い収支構造になり、給与の吊り上げ競争から脱落し、人材獲得で苦戦を強いられることになります。活躍のわりに給与の高いスタッフは退職せず、活躍のわりに給与の低いスタッフが他法人に流れますので、収支構造も組織風土がどんどん悪化していきます。
スタッフ1人1人の活躍と給与の連動・一致をしていかないと解決できない問題です。この問題を解決するためには、優秀な管理職を育成して人事評価制度を適切に運用すること、スタッフの下限品質を底上げする教育体制を整備すること、この2つの教育投資が必要なのです。一億総活躍社会が到来してからでは、他法人に遅れを取り不利な戦いを強いられることになります。
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この記事を書いたコンサルタント
沓澤 翔太
デイサービス、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの新規開設、収支改善、異業種からの介護事業への新規参入支援などを手がける。現在は、主としてデイサービスや有料老人ホームの利用者獲得や新規開設を中心にコンサルティングを行っている。 介護事業のコンサルティングの他、療養病床の転換や訪問診療など、医療業界のコンサルティングや、医療器具の販売促進についても実績を持つ。