オーガニックグロースの次にある成長戦略とは
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いつもメルマガをお読みいただき、ありがとうございます。船井総研の沓澤 翔太です。
エリアによって多少のバラつきはありますが、数年前から施設介護系のご支援先とは、オーガニックグロース(自社の経営資源による成長)による事業成長のリスクについて議論を始めており、今ではほぼ全国的にそのことを意識して経営を行なっていく必要があると捉えています。
実際、ライフサイクルではもっとも進みが遅い首都圏ですら、大小さまざまなM&Aが活況となっています。ほとんどすべての介護会社が、今後の経営戦略を一度立ち止まって検討するときが来ていると感じています。
今後の経営戦略を大きく2つに分けると、グロースか、承継か、ということになります。これは非常に大きな分かれ道で、中途半端な答えにならないようにすることが大切です。
社会性の高い介護事業に大きな借入をしてでも参入をされた方が大半でしょうから、ビジネスとしてのうま味がたとえ弱くなったとしても、地域のために続けていきたいと考える経営者も多いと思います。しかし、経営者である以上は社会性だけでなく、経済合理を加味して最終的な投資回収の判断をすべきであり、ときにそれが経営者自身のQOLにつながる場合もあります。
介護事業は労働集約型のビジネスモデルであり、つまりドミナントで拠点展開し、かつライフタイムバリューに寄り添った業態ポートフォリオで運営するのが、もっとも経営効率が高くなります。需要が大きいときはオーガニックグロースを中心としたシェア拡大で良いのですが、需給バランスが崩れた後は、M&Aグロース中心の成長戦略か、承継か、という選択になります。
社会性の高い経営者ほど「最終的には承継を考えているんだけど、利益が出ているうちは運営をし続けたい」と考えることが多いように感じますが、利益が出なくなってからの事業は承継先が見つからないことが多いのも現実です。経営者としての経済合理に加え、自分が生み出した事業を地域に残し続けること、従業員に安定した雇用環境を確保し続けることを考えたとき、利益が出ているうちに事業承継のアクションを始めるほうが良いことが多いと感じています。
私も中小企業向けの経営コンサルタントをしていますから、ビジネスのことだけでなく、経営者やそのご家族のこともお話しながら数十年寄り添うつもりで経営サポートを行なっています。社会性や経済合理だけでなく、経営者の年齢ややりたいこと、経営者のご家族の意向なども極めて重要です。
人口動態からは転換期を迎え需給バランスが変わっていきます。新型コロナの影響を受けて生活様式や価値観も大きく変わってきています。さらに、介護保険法の改定も目前に迫ってきました。
介護事業の今後についてどうするか、腰を据えて考えるちょうど良い時期が来ているように感じています。
この記事を書いたコンサルタント
沓澤 翔太
デイサービス、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの新規開設、収支改善、異業種からの介護事業への新規参入支援などを手がける。現在は、主としてデイサービスや有料老人ホームの利用者獲得や新規開設を中心にコンサルティングを行っている。 介護事業のコンサルティングの他、療養病床の転換や訪問診療など、医療業界のコンサルティングや、医療器具の販売促進についても実績を持つ。