介護の『囲い込み問題』に事業者はどのように対応すべきか

2020年3月23日配信

カテゴリ:
サ高住

皆様こんにちは。船井総合研究所の津田です。

ご支援先で、「ケアマネから囲い込みの指摘を受け、入居者に自社サービスを提供できない」と相談を受けることがあります。
サ高住や住宅型の囲い込みを問題視する風潮は今に始まったことではありませんが、エリアによっては昨今、更にチェックが厳しくなっているようです。
サ高住や住宅型の運営事業者は、どのように対応すべきでしょうか。

そもそも囲い込みの何が問題なのか

囲い込み問題には大きく3つの論点があります。

① 財政負担

2019年の予算執行調査によると、サ高住入居者は一般在宅生活者より介護サービスを25%~45%多く利用しており、平均利用単位数は要介護1が13,351単位、要介護2が17,678単位、要介護3が25,351単位、要介護4が30,109単位、要介護5が35,366単位となっています。

つまり、サ高住の生活にかかる社会保障費は、軽度者にあっては小規模多機能を利用するより重く、中重度者にあっては特定施設に入居するより重い、ということになります。

② 介護保険制度との整合性

運営会社のサービス利用を入居の前提とすると、中立的なプランニングに限界が生じます。また、利用者の選択に制限を設けることは、選択の自由の阻害を意味し、介護保険制度のそもそもの在り方と矛盾するのではないか?という声があります。

③ サービスの品質

サ高住は、総量規制がなく、補助金や税制優遇があることから、異業種参入の多い業態です。一方で、指導監査体制が十分に整っておらず、運営の質にバラつきが大きいことが指摘されています。特に近年は、運営体制の不備がキー局や全国紙で大々的に報道されたこともあり、問題意識が広く一般的に浸透するに至っています。

囲い込み問題に事業者はどのように対応すべきか

これらの論点を踏まえ事業者は何をすべきか。
答えはシンプルで、それぞれに明確な根拠をもって正当性を訴えられる状態で運営することです。

①については、あえて自主的に、利用単位数に一定の制限を設けるのもひとつです。それでは収益が上がらないという場合は、重度者対応施設として訪問看護をはじめとする医療系サービスを付加するなどして、利用率の高さに正当な根拠を持たせることが重要になります。
②については、他社サービスを利用して良いことをはっきりと認めつつ、入居者層として位置づける利用者が必要とする要素を自社サービスに組み入れ、自然と利用が促進される設計を行なうことです。
③については、単純なことですが、他社より品質の高いサービスを提供することです。バラつきがあるとは言え、高品質なサービスを提供するサ高住も決して少なくありません。他社より自社の方が高品質だと言い切れることが望ましく、自ら言うまでもなく地域のケアマネージャーにそのように認識されればベストです。

サ高住制度開始の初期より、訪問看護や定期巡回を併設したモデルは、拠点型サービス付き高齢者向け住宅として普及が期待されていました。様々な課題が問われる中ではありますが、適切なコンセプト設計のもと、地域に求められる住宅として運営を行なうことで、マイナスイメージを払しょくし、囲い込み問題の解決に繋がるのではないかと思います。

本コラムについてのご質問、ご相談は経営相談窓口までお問い合わせください。

この記事を書いたコンサルタント

津田 和知

津田 和知

大手介護事業者の介護付き有料老人ホーム施設長を経て、船井総合研究所に入社。前職の経験を活かし、現場主義で問題の本質や改善の糸口を掴み、経営者のサポートを行う。
コンサルティング領域は、介護事業全般の経営改善や訪問看護ステーションの立ち上げ、人事制度構築、厚生労働省調査研究事業への参画など。

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