株式会社はまリハ 代表取締役 臼居優 様

皆様、お世話になっております。
今回は、2014年に神奈川県で介護事業を立ち上げられた、
株式会社はまリハ 代表取締役 臼居優様に、
立ち上げ前から現在、今後の目標についてお話をお伺いいたしました。

臼居優

船井総研

自己紹介・キャリアなどのご経歴を教えていただければと思います。

臼居様

大学を卒業して不動産会社に3年勤めた後、理学療法士の学校に行き、30歳で理学療法士になりました。その後、総合病院に勤めて5年間、急性期から回復期・維持期・訪問リハビリを経験しました。その後、訪問看護ステーションを立ち上げました。

船井総研

訪問看護の経験は何年間くらいですか?

臼居様

訪問看護は2年です。「是非訪問リハビリをやりたい」と言い、セラピストが70~80人いる病院に配属してもらいました。週1回、訪問看護ステーションで訪問リハビリのバイトと病院の両方を2年間行いました。

船井総研

なぜ病院に勤めていた中で起業したのですか?

臼居様

もともと介護に興味があり、自分のやりたいことに突き進もうと思い、病院に勤めてから独立しようと決めました。大学時代にホームヘルパー2級の取得を目指していましたが、理学療法士の専門学校の4年生であった29歳の時に急性骨髄性白血病になり、病院での抗がん剤の治療が苦しく、半年ほど入院し、その時にも改めて在宅は重要だと思いました。
それまではなんとなく独立したいと思っていましたが、病気の経験から起業したい気持ちが強まり、決心しました。

船井総研

すぐに起業するのではなく、1度病院に勤めてからというのは、現場を経験しておきたいからということですか。

臼居様

理療法士としていきなりの訪問は難しいと感じて、少なくとも3年ぐらいは病院の急性期等で勤めないと通用しないという思いがあったからです。まず3年は臨床を病院で経験して徐々に在宅・維持期のほうにシフトできたらいいなと思い、それを踏まえて5年は勤めようと考えました。

船井総研

そこでの決意から訪問看護のバイトに至っているのですね。

臼居様

独立するにしても全然よくわからず、試しにしてみようと思いました。妻からの「独立するなら、ちょっとバイトしてみたらいいじゃん」というアドバイスを受け、確かに現場を知らない自分が起業するのは無謀だと思い、アルバイトを始めました。

船井総研

独立を止めるのではなくて応援してくれてる素晴らしい奥様ですね。

臼居様

子供がちょうど産まれた頃で、リスクがあり、よく背中を押してくれたと思います。

船井総研

奥様は医療関係の方なのですか。

臼居様

看護師です。全く一緒にはやっていませんが、現在はリハビリ病院に勤めています。

船井総研

そうでしたか。現場での経験も積み、独立しようと思ったときに、情報収集はどのようにしましたか。

臼居様

基本的には、アルバイトをしている訪問看護ステーションの社長にアドバイスをもらいつつ、インターネットで調べることで情報を集めていました。書類関係は訪問看護のアルバイト先で見ることができたため、そこで学びました。

船井総研

インターネットはどのような調べ方をされましたか。「訪問看護独立 起業」という感じですか。

臼居様

まさにそのような検索から始めました。また、検索を通じて○○様の説明会に参加しました。あとは2万円から5万円くらいの費用でカイポケ様の請求ソフトを使う前提であれば、開業までのスケジュールとか事業計画書の書き方などのテンプレートをメールとか電話のサポートから支援してもらい、独立(開業)まで進めたという感じです。

船井総研

なぜデイサービスではなく、訪問看護にされたのですか。

臼居様

デイサービスは店舗型で初期費用がかかってしまうというところで、少し難しいと思いました。看護師さんを採用できるのであれば訪問看護のほうが発展性があると思い、訪問看護を始めようと思いました。

船井総研

周りの病院の時の仲間に辞めて独立するというお話はされましたか。

臼居様

私の場合は、独立することを宣言していたので、病院の方も背中を押してくれました。独立は辞めたほうが良いという声も多少あった気もしますが、独立したい気持ちが強くその時は、あまり聞き入れないようにしてました。アルバイト禁止の病院でしたが、独立後に10人以上のPT・OT・STがバイトに来てくれました。そのため、正社員を取らずに非常勤という形で週6日ぐらい回せる感じでした。

船井総研

資金調達のことについてお伺いいたします。大体いくらぐらいで、どこから調達されたのか教えていただければと思います。

臼居様

創業融資で、日本政策金融公庫から800万円、横浜市の制度融資で400万円の合計1200万円ですね。自己資金の200万円と合わせて、合計1,400万円からスタートしました。

横浜市の制度融資は創業融資の1つの枠になります。保証協会は付きますが、その時は横浜銀行が窓口をしてくれました。

船井総研

日本政策金融公庫や制度融資から資金調達するときに事業計画を作成すると思いますが、その辺の書類関係はどのように作成されましたか。

臼居様

カイポケ様の開業支援で使用できる事業計画書のテンプレートを利用しました。テンプレートは30枚くらいあり、穴埋め式で、各項目の内容をテンプレートに基づいて記載しました。

計画書を資金調達先に提出して、意見が返ってきたら修正し、申請を通していきました。

収支計画も○○様が作ったのがあり、自分の中でシュミレーションみたいなことを行い、それを自分でエクセルに現実的なところに落とし込み資金調達先に提出しました。

船井総研

事業計画書のなどの書類関係はカイポケ様のほうで用意出来ましたか。

臼居様

私の場合は横浜市だったので、市のホームページにいくとこれを出してくださいという指示があり、それを調べてわからない部分は行政に確認しながら申請までいきました。

船井総研

なるほど。書類を提出してから借入できるまでにどれくらいの期間かかりましたか。

臼居様

1か月程度です。

船井総研

それは会社を作ってから資金調達ですか。先に起業すると決めてからの資金調達ですか。

臼居様

会社を作ってその後すぐに資金調達したといった流れです。どうしても会社で融資を行うので、一応登録がないと駄目で、謄本提出等の必要性もありましたので、その流れで行いました。

船井総研

初めの資金調達ができ、集客していこうとなり、次は開所に向けて人員基準の2.5人の確保となると思いますが、この辺はどのように確保していきましたか。

臼居様

私は、もう全部縁故採用みたいなところです。もちろん募集も出しましたが、なかなか人が来ませんでした。1月に病院を辞め、4月にオープンしたので全然期間がありませんでした。看護師である妻の知り合いに声を掛けてもらったり、あとは病院時代の看護師さん、セラピストさんとかに声を掛けたりしました。

船井総研

なるほど。縁故での採用はすぐに集まりましたか。

臼居様

そうですね。1か月か2か月くらい掛かりましたが、とりあえず人員基準までは集められました。

船井総研

4月にオープンして、集客、営業活動やパンフレット作りなどは同時進行で行っていましたか。

臼居様

2月、3月に拙いパンフレットを、クラウドワークスを用いて自分で作成しました。パンフレットとチラシを持ってケアマネジャーさんへの営業を3月末から行いました。

船井総研

開所してみて苦労した点などはありますか。

臼居様

最初の頃は、やはり請求業務に苦労しました。売上が入るのでしっかりとしないといけませんが、よくわからない状態で調べながら請求した記憶があります。

また、制度関係や事務関係は、事務員もいなかったので全部私がやらないといけませんでした。ですが、あまり大変といった気持ちはありませんでした。よしやるぞという意識で充実してました。

船井総研

なるほど。その当時は社長も訪問に行っていましたか。また、実際に営業に行かれて大変だった、すごい受け入れがよかったなど、感触的にはいかがでしたか。

臼居様

週6日は行っていました。感触として、7割以上の方たちが好意的に受け止めてくれました。後は、営業先の方に「母体はどこなのですか?」ということはたまに聞かれ、「えっ?」と思うことがありました。「いや、特にそういうのはないです」と答えると「はあ?」みたいな感じの反応が帰ってくるので、そういうことも意外と気にするのかなという感想は一部の営業先でありました。

船井総研

当時の横浜だと、まだそこまで介護の会社さんが訪問看護を積極的に行う状況でもなかったということですかね。

臼居様

まだ少なく、ちらほらという感じでした。多分ケアマネジャーさんとしてもどこの母体でやり始めたのか気になっていたと思います。

船井総研

さすがに今はそのようなことはないですよね。

臼居様

そうですね。今はもうある程度浸透できており、そういうことはありません。

船井総研

ありがとうございます。今、会社のスタッフさんは合計で何人いらっしゃるのですか。

臼居様

今は85名ですね。

船井総研

多いですね。その中で会社の強みとか、他社より絶対的に自信を持っているポイントとかありますか。

臼居様

多職種連携に自信があります。うちには理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などかなり専門性の高い職種が集まっています。これで1人1人の利用者様に関わることができ、非常にいろんな視点からサポートができる点が非常に強みです。

船井総研

最近の課題や、改善が必要だと感じる点はありますか。

臼居様

人数が増えてきて、ある程度は会社として「共生社会」の実現に向かっていますが、個人プレーの訪問等になりがちで、もう少しコミュニケーションを密に取っていくことでより良いサービスを提供できればと感じています。

船井総研

コロナもあってなかなかコミュニケーションを取りにくい状況ですしね。

臼居様

非常にそれは感じますね。オンラインで朝のミーティングやカンファレンスも行いますが、スタッフは対面での交流を求めていると感じるので、コロナが落ち着いたら密な交流を行いたいと思います。

船井総研

ありがとうございます。会社としての目標を教えていただきたいと思います。

臼居様

そうですね。「共生社会」の実現に向けて、横浜市旭区若葉台に看護小規模多機能居宅介護+住宅有料老人ホームと、重症心身障害児のお子さんが学校卒業した後も安心して住めるグループホームを作っていきたいです。

船井総研

凄い資金が必要そうですね。

臼居様

そこは久積さんにどうにか技を教えてもらって実現したいです。

船井総研

地域社会にはそのような施設は絶対に必要です。行政との連携というのは今取られていると思いますが、土地は確保できそうですか。

臼居様

具体的な場所はありますが、入札みたいな形になり、まだお話を内々でしている状態です。後は資金面がそこまで回せる余裕はないので、あと1、2年の期間で整えていきたいと思います。

船井総研

壮大な計画ですね。

臼居様

計画は壮大です。それが実現できるように頑張っていきたいと思っています。

船井総研

今までで苦労している部分はありますか。

臼居様

人材の問題は一生離れないと思っています。一時退職が増えた時期もあって流れは大切だと思っています。今も人の問題は解消されてないですが、状況に応じて相手の言ったことを1回受け止め、向き合いながら答えを出すのが大事だと思います。

船井総研

そうですね。社長のキャリアや会社のお話はお聞きできたのですが、商圏範囲(訪問で回っている範囲)などの具体的な数値の部分をお話いただければと思います。

臼居様

少し広いと思っていて、5キロくらいはあります。

船井総研

なるほど。移動時間にするとどれくらいの時間になりますか。

臼居様

長いところで30分ですかね。昔は1時間という場所もありました。往復で1件訪問できる時間ですので、皆さんから不満は出てました。今は、それぞれの事業所である程度カバーできてると思います。昔は、1つの事業所で全部をカバーしていたので、片道1時間はかかりました。

船井総研

すごいです。職種ごとの売上、例えば理学療法士の売上はおいくらぐらいでしょうか。

臼居様

毎月出してますけど、最近は低いです。1人あたりおよそ80万円ぐらいです。いいときは100万円ぐらい到達してました。

人が増えると、一人当たりの稼働時間が減り、スタッフ間の負担軽減にはなりますが、稼働率の視点で見ると非常に効率が悪いです。

船井総研

稼働率は理学療法士・作業療法士による差はありますか。

臼居様

そこはあまりないです。セラピストと看護師さんでは少し差があります。

船井総研

看護師さんの稼働率は現在どれくらいですか。

臼居様

およそ75%です。

船井総研

看護師さんの給料のほうが、セラピストさんと比較して少し高めではないですか。

臼居様

ベースは高いです。あと、歩合も看護師さんのほうが高いです。ただ歩合はあまり出ていないので、基本的にセラピストさんと給料は変わらない状況です。

船井総研

例えば40時間勤務とした場合、平均件数はどのくらいになっていますか。

臼居様

おそよ1日4件くらいです。30分とか1時間訪問を入れる件数だと4件程になると思います。

船井総研

看護師さんも同じくらいか、もう少し低めですか。

臼居様

4件いくか、最近だと3.8件とかもありました。せめて4件はいけると、また違ってくると思います。

船井総研

医療や看護だと30分、60分といった枠があると思いますが、理学療法士・作業療法士はどの枠の訪問が多いですか。

臼居様

60分訪問です。昨年の改定で40分は基本的に60分より低い算定になりましたので、リハビリは60分にシフトしました。介護の方だと40分の方も少しいますが基本的には6〜7割以上で60分の方が多いです。

船井総研

看護師さんはどうですか。

臼居様

基本1番多いのは60分で、割合としては6割が60分で3割が30分です。

船井総研

24時間対応はされていますか。

臼居様

最初から24時間対応はしています。訪問看護をするには24時間対応がないとという想いがありしています。

船井総研

リハビリ特化型だと看護は24時間対応していないこともありますが、それは初めからないのですか。

臼居様

そこだけは外してはいけないという想いもあり、意識はしていました。

船井総研

何人くらいの看護師さんの方がオールコール対応しているのですか。

臼居様

今は4、5人が交代でしています。

船井総研

毎日、夜中にコールが鳴っていますか。

臼居様

毎日ではなく、2日に1回です。うちは比較的少なく、電話対応で済む場合もありますが、土日に必ず1回ずつはある感じです。

船井総研

ありがとうございます。人件費比率の項目などもお聞きしたいです。

臼居様

大体6割を超えて高い状態です。税理士と毎月打ち合わせしながら出し、58%ぐらいの時もありましたが、62%とかいくこともあり高いと感じています。

船井総研

わかりました。次に会社としての今後の展開を教えてください。

臼居様

デイサービスの展開に注力したいと考えております。3年目にサテライトを横浜市内で作り、居宅ができ、そこからまたデイサービスをもともとしたかったこともあり、個別のリハビリができるデイサービスを作りました。そこから「共生社会」という言葉もありますが、子供から大人までサポートしたいという想いがあり、重症心身障害児専門放課後デイを2020年の4月からスタートしました。

人工呼吸器とか気管切開していて、基本的に重症心身障害児は知的障害と肢体不自由が重複障害になるので、重症心身障害児専門の放課後デイサービスは5個もないくらいです。ニーズはありますが、看護師さんを採用しないといけないこと、利用者が車椅子を使用することなどを考えると、採算が合わなくなってしまいます。

船井総研

重症心身障害児の事業を始めようと思った理由は、会社としての「共生社会」というテーマがあるからですか。

臼居様

そうです。私が結婚するまで30年間生まれ育った横浜市旭区若葉台という団地に恩返ししたい想いがあり、本来は若葉台の中にも訪問看護ステーションを作りたい想いがありました。最初はそこに作ろうと思いましたが、物販しか駄目だったため、ちょっと離れた緑区の十日市場でスタートしました。

船井総研

ありがとうございます。これから社長みたいに独立する理学療法士の若い世代の方も多いと思います。そういった方々に向けて、社長が思われることやメッセージをいただければと思います

臼居様

セラピストさんはすごい勉強熱心で知識もしっかりとあり、能力も非常に高い方が多いです。突き進むと必ず誰かが助けてくれると思うので、まずは自分の知識や経験を活かし独立してもらえると楽しく明るい未来があると思います。

船井総研

ありがとうございます。素敵なメッセージです。たくさんお聞きしましたが、大変というよりも、結構楽しく好奇心持ってどんどん達成していきたい想いがあり進まれてきましたね。

臼居様

そうですね。はい。

船井総研

かしこまりました。本日はインタビューにお答え頂きありがとうございました。

臼居様

こちらこそ、ありがとうございました。

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