強い社会性を持って事業へ参入!”精神科”訪問看護新規参入事例!

10万人規模の地方都市 埼玉県坂戸市で、事業参入から5年で福祉事業を15拠点に拡大し、成長を続ける合同会社ラボリの代表社員、太田よし美様に取材をさせて頂きました。

有限会社MYコーポレーション代表取締役 北島千愛氏

 

創業から就労準備型放課後等デイサービス成功までのエピソード

船井総研:事業を始められた経緯について教えてください

北島氏:私は元々、看護師として病院に勤務していたのですが、20代のころに、死産 や流産が続いた事が原因となり精神疾患を発症しました。鍵のかかる精神科病院で、 入退院を繰り返し、何のために生まれてきたのだろうと繰り返し考えていました。拒 食がひどく、自分で立ち上がる事も出来ず、緊急入院となり、1週間受診が遅けれ ば、心臓が止まっていたと説明を受けました。あの頃は、生きる希望を完全に失って いた時期でした。そのような時にでも、私を見捨てず、支えてくれた環境が、社会復 帰へ繋がりました。勤務先に籍を残したままでいてくれていたり、担当医師や看護師 さん、 友人のお陰で、今の私が存在します。症状が回復するにつれ、自分と同じよう に、精神的に不安がある方の支えになりたいという思いが芽生えてきました。そこ で、精神科に力を入れた訪問看護ステーションを立ち上げ、代表取締役として、私な りのカタチを作りました。

船井総研:事業の立ち上げについて、もう少し詳しくお聞きしたいですが、総合病院から独立してこの訪問看護を立ち上げられたのか、あるいは精神科の病院で勤務経験を 経て、独立されたのでしょうか

北島氏:私は、精神科の経験はなく、病院で勤務しておりました。自分が代表になって 地域医療に移行しようと思ったのは、前職で一般の訪問看護を立ち上げメンバーとし てゼロから経験したのですが、そこは、数字を重視するような会社だったので、自分の思うような支援をしたいと思い、独立してこの事業を始めました。

船井総研:事業は立ち上げられて、今年で何年目になりますか?

北島氏:
丁度 4 年経ち、5 年目に入ります。
船井総研:4 年前という事は、新型コロナウイルスが蔓延していた時期だったと思うのですが、事業所運営はいかがでしたか

北島氏:苦労しました。丁度、新型コロナウイルスが蔓延しだした時期だったので 挨拶回りが一切できず、営業を実施することすらできませんでした。ですので今でも そうですが、どのような症状の方でも断りません。実際私たちは、地域で重症・困難事例と表現される方を担当することが多いので、その実績が口伝えで拡がり、相談支援事業所や役所等の行政機関から直接依頼をいただくことが増えていきました。なので、そこまで営業という営業はしていなかったと思います。

船井総研:そこまで営業をしていないという話だったと思うのですが、紹介が発生する理由は何になりますでしょうか。難しい方でも受け入れをしているという実績や地域 からの評判が大きいでしょうか

北島氏:そうですね。実際に⻑期間で入院されていた方でも、弊社の訪問看護を利用し て就労支援に繋がった事例や 15 年以上引きこもりだった方が、就労支援に繋がる等、 様々な実績が評価されて、紹介に繋がっていると思います。実際、訪問看護を利用す る人でも本当は退院していい状態ではない方でも生活保護の関係や、その他の事情で退院せざるを得ない方がいらっしゃったりします。状態が不安定な方に対しては、1 回の訪問時間を⻑めに取ったりして、丁寧な支援を心がけています。私たちが支援することで徐々に状態が安定していくケースが多いです。

船井総研:相談支援事業所や行政機関からの紹介が多いということだったと思うのですが、それは地域性として病院自体が退院調整をするというよりは、地域の相談支援事業所等が在宅復帰後の支援を担っているからなのでしょうか

北島氏:この地域でも、まだまだ病院と地域の壁がある傾向にはあります。命に直結す るような状態になり、病院に受け入れをお願いしても、お酒を飲んでいる状態では 対応できません。出直してくださいなど、入院の受け入れをしてもらえなかったり、 逆に退院する際も情報共有がなされず、受け皿がないまま、地域に帰ってくるケース もあります。この 10 年で、変わった部分も多くありますが、私も地域の抱える課題を 何とかしたいと思い、病院と地域が連携できるカタチを模索しています。その一つ に、精神科で母子同室入院を実施して産後ケアに力をいれている病院があるのです が、その病院が開催しているサークルに参加させてもらって、入院中の情報や、退院 後の在宅生活での困り事等を事前に共有することで、病院との連携を強化しつつ、「病院と地域の壁」という課題を、それぞれの立場で取り組み始めました。

船井総研:精神の疾患というと 40代〜60 代という方が多い印象があるのですが、 母子同室入院等の話から年齢層が低い方も多いと感じたのですが、利用される年齢層と しては、どのくらいの方が多いのですか

北島氏:多いのは、30代〜50代の方が多いのですが、私たちもそれぞれ、経験してき た診療科があり、産科が⻑いスタッフもいるので、産後うつの方のケアが出来ることも強みとしています。地域の産婦人科と連携し、出産を控えているお母さんを対象に 母親教室の場で、産後困った時の支援がある事や、寄り添う場、お母さんたちの居場 所がある事を伝えてもらうなど、お互いを知る機会をつくっています。

船井総研:先程、断らないという意識で運営されているという話があったと思うのです が。精神疾患を持つ方に対して、特に経験がない看護師さんだと不安に感じるケース も少なからずあると思うのですが、御社で勤務されている方は皆さん、精神科での経験があるのですか

北島氏:弊社でいうと今はスタッフが10人以上いて、経験のある方とない方で半々ぐ らいです。創業は3人でスタートしたのですが、全員精神科の経験はなかったです。

船井総研:それはすごいですね。難しい方もこれまで受け入れされてきたと思うのです が、不安はなかったですか

北島氏:寧ろ不安しか無かったと思います。ただ、自分の経験と重ねて、ここで私た ちが支援することが利用者さんの将来に繋がると信じて、その気持ちの方が不安より 圧倒的に強かったと思います。今でもすごく大事にしているのですが、支援者と利用 者という関係ではなく、「人と人」で向き合っています。人と人が向き合う時に必ずしも経験が必要かというと、そうではないと思っています。私たちも日々、利用者さん と向き合いながら、コミュニケーションの取り方など、対応スキルを磨いています。 他にも外部の職能研修とは別に、人としての在り方や道徳的な研修に参加したりなど、看護師として人としての気質を学ぶ会社ではあると思いますね

船井総研:完全な未経験の方でも入職されたケースがあると思うのですが、研修体制などもしっかり整備されているのでしょうか

北島氏:完全に仕組化にはなっていないのですが、例えば新しく入職された看護師さん には教育係りを必ずつけるようにしています。他にも、実際の訪問同行も3か月間実施し、未経験の方でも、1 人で訪問出来るような教育体制にしております。

船井総研:未経験の方を採用するケースもあると思うのですが、職員を採用する段階で精 神科訪問看護に適している人材はどのような方になりますか

北島氏:必ず、面接時に聞いているのが、「休みの時に何をしているか」「自分の困ったことやシンドイ時に気持ちの切り替えは上手ですか」と聞きます。 1 つ目の休みのときに何をしているかについては、自分が楽しみに感じている時間を持てる人なのかと いうこと。2 つめの切り替えについては、精神科訪問看護の場合は、気持ちの切り替えが得意な人でないと気持ちが病んでしまうこともあります。 スタッフのメンタルフォローが運営上一番重要だと感じていて、気持ちの切り替えが得意と自分で言えない人は難しいかなと経験上思います。ずっと引きずってしまうと、スタッフも家庭があり、そこに支障が発生すれば、離職に繋がるので、そこはある意味覚悟してきていただく為の質問です。

船井総研:看護師さんが気持ち的に落ち込んでしまうケースとしてどのような事が挙げられますでしょうか

北島氏:一番多いのが、精神疾患の方は前提として急激に良くなるということがなく、人生を伴走していきますという支援スタイルなので、病気を治す、目に見えた結果を求めてしまうと自分たちがやっていることの必要性や意義を見失い、気持ち的に 落ち込んでしまいます

船井総研:その点でいうと、先程引きこもりの方が就労サービスへの利用に繋がった 等、時間をかけて改善につながるというケースが御社の場合は多いのでしょうか

北島氏:そうですね。私たちは、家でサービスをすることに固執するわけではないの で、例えば、その方が公共交通機関を利用することで、社会復帰できるのであれば、 一緒に公共交通機関を利用してみたり、日常生活を「共に行う」支援をするので、そ ういう意味では明確にステップアップするケースはあります。先程お伝えした引きこ もりの方は、まず契約の前段階から、ご本人に会えないというケースでしたので、ご 家族に聞き取りを行いました。本人が何が好きかを聞いたところ、旅行が好きだということだったので、旅行関連のパンフレットを集めて部屋のドアの前に置きました。次に行った時に、パンフレットが無くなっていたので、方向性は間違っていないと思い、どこに行きたいか、家族と共に考えました。昔はディズニーランドに行きたいと 言っていたという点にヒントをもらい、ディズニーランド関連のパンフレットを、そ っとドアの前に置いて帰りました。相手が気持ちを開いてくれるまで、距離は詰めない。その姿勢が成功に繋がり、直接お会いすることが出来、そこから話が出来るよう になりました。本人が旅行に行きたい思いが強くなったタイミングで、旅行代金を調べ、お金を貯める方法を一緒に考え、それであれば仕事しないといけないよねといった話が、就労支援につながった症例です。段階をきちんと踏めば、このような改善に繋がるケースがあります。数か月レベルの短期間で改善に繋がるケースというのは少ないと思います。

船井総研:訪問看護の利用回数について、精神科訪問看護の場合は事業所と利用者側で 調整することも多いと思うのですが、どのくらいの利用頻度の方が多いのでしょうか?

北島氏:週2回の方が一番多いと思います。ただ、状態によって、回数の調整をしてい るので少ない方だと月1回という方もいますし、退院直後やリスクの高い方だと週 3 回以上訪問するケースもあります。

船井総研:看護師さんが 10 人以上いるということで、ホームページも特別用意されて いないように見受けられるのですが、職員はどのように採用されているのですか

北島氏:ホームページは実はずっと作りたいと思っていて実際に業者ともやり取りはし ているのですが、自分たちの想いをカタチにしようとするのに、かなり時間を要しております。 (笑)。まだ完成にはいたっていないですね。いつか完成させたいと思って います。採用は基本的には職員や外部からの紹介で雇用に繋がるケースが 大半です 。

船井総研:最後に今後の事業展開について教えてください

北島氏:訪問看護ステーションとしては、新規出店は現状考えていません。ただ将来 的には山の中といった、医療が届きにくいエリアにも医療を届けたいと考えております。しかし、経営的な事を考えるとそのようなエリアに訪問することは、自社の体力 が必要となります。収益性を落とすことも理解したうえでも、私たちが医療を届けた い。新規事業で、安定した収益を上げる事で、安心を届ける事ができ、会社も存続し 続けられる。その基盤作りに現在、社員一丸となり取り組んでいるところです。

船井総研:本日は大変お忙しいところお時間をいただきありがとうございました。

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