株式会社グリッド

 株式会社グリッドは、京都市西京区を拠点に、訪問看護、訪問介護、ケアプラン作成などの在 宅医療介護サービスを提供しています。今回は、同社の訪問看護事業について、代表の石田敬 子様、管理者の堤様、岡山様、小畑様にお話を伺いました。

【基本情報】2024年11月時点
会社名:株式会グリッド
● 訪問看護事業部
  ○ ステーション数:3事業所
    ■ 看護師:常勤30名、非常勤3名、
    ■ 理学療法士:常勤8名、非常勤0名
    ■ 作業療法士:常勤3名、非常勤1名
    ■ 言語聴覚士:常勤2名、非常勤0名

  ○ 年商:会社全体の9割が訪問看護事業部の収益
    2022年度:1億円
    2023年度:2.4億円
   2024年度:3.6億円
   2025年度:5億円(予測)
    ■ 医療保険:介護保険の割合と内訳
    利用者数 医療:介護=4:6
    年間売上 医療:介護=6:4
    ■ 医療保険のうち5~6割が精神疾患の方
    ■ 看護師1名あたりの生産性は平均100万円超え(新入社員含め)

船井総研
会社の沿革について教えてください。

石田様
弊社は2003年創業、当時はまだ珍しかった自費訪問介護、人材紹介業、施設へ介護士 派遣などを中心に行い、介護保険事業は行っていませんでした。その後、2012年訪問介護、居 宅介護支援事業所を開始し、2016年に念願の訪問看護ステーションを開設しました。

船井総研
ぐりっど洛西訪問看護ステーションの開設当時について教えてください。

石田様
3年間は3人ギリギリでやっていて、本当に苦しかったです。最初の管理者の方が真面目 だったんですが、看護師としての意見や看護感というものが強く、看護師ではない私がなかなか うまく管理できませんでした。また地域への営業活動や他の看護師の採用や育成も進まず伸び 悩んでいました。赤字が続き、もうやめようと何度も思いました。

船井総研
休止や廃止せずしなかった理由を教えてください。

石田様
2年でなんとか単月黒字まで持っていくことができたのですが、そんな頃に、当時20代 だった若い看護師(堤Ns)が入社してくれたんです。今から約5年前になります、責任感や推進力 があると感じ、訪問看護未経験だったのですが管理者に抜擢しました。

船井総研
当時の管理者さんは変更を素直に受け入れたのでしょうか。

石田様
自分の意見や看護感を活かして進んだ方がうまくいく方だと感じていましたので、変更を 考えたタイミングでご自身での独立を勧めました。

船井総研
突然の管理者の任命、当時を振り返っていかがですか。

堤様
未経験ではありましたが、勉強させていただくつもりでとにかく何でもやりました。 利用者数は前管理者の方が独立された時に、100名から50名程度へ半減した状態からの再スタートでした。比較的最初は余裕があったため、石田社長に営業を教わりながら少しでも時間がある時はあいさつ回りに行っていました。

石田様
それでも旧体制の売り上げを新体制2か月目には超えていました。営業件数を足でしっかり稼ぎながら、訪問もこなしてくれていました。空き時間は営業営業、とひたすら営業。依頼が来たら1件1件丁寧に対応し、紹介が信頼やリピートに繋がっていったのだと感じています。

船井総研
営業や利用者数を増やすポイントはなんでしょうか。

堤様
とにかく断らない、その一点を今も軸にしています。 地域の中で「グリッドに依頼したらなんとかしてくれる」というイメージが確立できて来たと実感しています。クリニックや居宅など固定の紹介元もありますが、地域全体から毎月1,2件ずつ、合計で毎月30件程度依頼が来るようになりました。 今も、訪問の合間に先生やケアマネージャーさんに挨拶に寄るようにしています。各営業先への担当もエリアや相性で振り分けているので、どの看護師が担当するか見極めも重要だと考えています。

船井総研
ここまでかなり順調な運営ですが、つまづきや失敗はなかったのでしょうか。

堤様
あいさつ回りも最初は門前払いが多くて、名刺もいただけないような状態でした。ローカル ルールがわからず怒られたこともあります。昔ながらの事業所は紹介先も固定化していることも あり苦戦しました。ただし、その経験を通じ、地域の特性を学んだり、精神面も相当鍛えられました。 また会社も「インシデントは宝」として扱ってくれるので、臆することなく挑戦を続けられたと思 います。

船井総研
新人看護師も1か月半で訪問枠が100%埋まるとお聞きしていますが、これはかなり 驚異的な数字です。育成や仕組みで工夫されている点はありますか。

堤様
実際に1カ月半もかからず、ほぼ1カ月で枠が埋まります。そのくらい有難いことにご依頼 が多いんです。 訪問看護では、利用者様の体調管理、服薬管理、リハビリテーション、在宅酸素療法や人工呼吸器などの医療機器の管理、創傷処置など、多岐にわたるサービスを提供しています。また、精神疾患や認知症の方への対応も行っており、知識・経験があればよりよいのですが、在宅に関しては介護保険制度や他職種の理解や連携などさらに多くの情報が必要です。そのため、プリセプター制度もとりながら、知識面よりまずは訪問を優先して実践的に学んでもらっています。 現場で困ることがないよう、手技や記録のルールも細かく決めて、カルテに残し、初見の方でも新人でも対応できるように意識しています。システムはIbowを使用し、リアルタイムでもLINEや電話でフォローできる環境を整えています。独り立ち後も、症例ベースで同行も行っています。

船井総研
かなりフォロー体制が厚く、成長スピードが速い環境ですね。

岡山様
認定看護師取得、特定行為研修、実習指導者講習などを会社のサポートを受けて資格取得が目指せる環境も整っています。

堤様
以前は週1回カンファレンスを行っていましたが、今は人数が多くなりすぎて症例の抽出が困難となったので実施方法を変更しました。カルテの申し送り機能で代替も十分できますし、必要が有ればオンラインを活用するなど、形を変えて実施しています。

船井総研
採用実績も今期17名と順調な採用が進んでおられますが、採用基準やフロー、実績について教えてください。

石田様
年間予算は約2000万円、看護は今期11名、来期17名の採用予定です。実は既に10月時点で今期予定を超える12名を採用しています。看護師の採用基準は管理者の看護師にすべて任せていますが、「妥協しない」ということだけいつも伝えています。今後はリハビリ職や来年のナーシングホーム開設を見据えて介護職など積極的に採用していく予定です。

堤様
一般的な媒体はあまりうまくいったことがないので使用していません。これまでの実績としては人材紹介会社経由が多く、数名リファラル採用です。最近は採用専用のホームページを作ったので今後は自社でも採用ができるように少しずつ挑戦したいと思っています。採用フローは書類審査、面接、4名の管理者による協議と進み、最終的に判断します。採用率は10%となっていて、人員が足りないときでも妥協はしないようにしています。

小畑様
「あれっと思ったときは何かある、迷ったら落とす」と社長から教わりました。

船井総研
離職率は5.7%、定着する組織という印象がありますが秘訣はありますか。

堤様
3年で倍以上の看護師に増えました。看護師たちは看護が好き、というより地域貢献への意識が強い人が多く、会社のことや地域のことが好きな人が多いと感じます。そういった社風に合うかも大事ですね。社長が営業や売上を気にした発言はほとんどなく、職員へ「いつもありがとう」と感謝をしてくださる。やる気が出ますし、売上を出せば、給与に反映されます。基準も明確なのでやる気になります。勤務形態も週4日で正社員、正社員でも可能ですし、オンコールをするしないなど柔軟な働き方ができるので、働きやすく一人一人が大事にされていると感じやすいと思います。

石田様
給与体系はキャリアパスに合わせて構築、目標年収を設定しています。能力を評価し、在籍年数に関わらず管理職はなりたい方を引き上げていますが強制はしていません。

船井総研
今後の展望について教えてください。

石田様
今後も医療介護の専門集団として研鑽を重ねながら、ナーシングホームや看護小規模板機能などの施設事業や訪問診療の事業を展開したいと考えております。

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