高齢者から精神疾患まで幅広い年代層をケアする、 訪問看護運営事例

株式会社New Life Design
代表取締役 沼田 祐二様

広島県にて一般科の訪問看護ステーション、精神特化の訪問看護ステーション2拠点を運営されている株式会社New Life Design様。本記事では、代表取締役の沼田様に訪問看護立ち上げ当初から現在に至るまでのエピソード、法人として大切にされている理念についてお話いただきました。

船井総研
法⼈としての最初の事業が訪問看護ということで、訪問看護を始められたきっかけは何だったのでしょうか

沼⽥様
まずは私の経歴からお話しさせていただければと思います。 私は福祉関係の⼤学を卒業した後、ある社会福祉法⼈に就職しソーシャルワーカーとして7年間勤務しました。 その後、別の社会福祉法⼈に誘われて前職に移りました。 その法⼈での最後の3年間は総務の仕事に携わったのですが、その中で社会福祉法⼈においても経営という視点がとても重要だと感じるようになりました。 最近では実際に社会福祉法⼈の経営破綻や合併などもよく聞かれるようになりましたが、当時の多くの法⼈ではあまり危機感はなかったと思います。 ご存じのとおり2000年の介護保険制度の導入にともない、介護の分野でも「措置から契約へ」と移行し、第2種社会福祉事業においては株式会社など営利法⼈の参入も認められるようになりました。 いわゆる自由競争となった介護の世界では、運営主体に関係なく質の高い事業者が生き残る時代へと変化したのです。 私はそのような中で独⽴したのですが、医療介護の事業をやるのであれば、経営効率や将来性などを総合的に考慮して、訪問看護を主軸とした事業が最善だと考えました。 もとよりそれはビジネスのみに着目したものではなく、国が推進する「地域包括ケアシステム」や「地域医療構想」といった在宅医療・介護の充実を図るにあたって、極めて重要な役割を果たすのが訪問看護であると考えたからに他なりません。 当時、訪問看護といえば多くの事業所が病院の中にあり、病院の機能に付属するものとして訪問看護が存在しているというのが⼤半でした。 それゆえそこで働いている方も、訪問看護に対して理想は抱き辛く、訪問看護をやりたいから病院に就職するというイメージはなかったと思います。 そこで私は、訪問看護をやりたい⼈がその理想を実現するために働ける場所を作ることを目標に掲げ、三原市に「訪問看護ステーション楓」を開設したのです。 2020年というまさに新型コロナウイルスの⼤流行が始まった時期に開設したこともあり、当初は何とか利⽤者を獲得しなければという思いもありましたが、何より既存のステーションが対応できない⽇曜⽇や祝⽇の定期訪問、或いは⼭間部に住まわれている方への訪問により、本当に困っている方々のニーズに積極的に応えて実績を積み重ね、まずは地域や関係者の方の信頼を得ることを心掛けました。

船井総研
病院が運営している訪問看護という話がありましたが、病院では⼈事異動において訪問看護をやりたくないのに、異動せざるを得なかったりするケースはありますよね?

沼⽥様
確かにそのようなケースはあると思いますが、もちろん崇高な理念を掲げて素晴らしい訪問看護を実践されている病院も数多くあります。
一方で、自分たちの理想を実現するために病院を辞めて新たにステーションを⽴ち上げる方も増えています。
しかしながら弊社も含めて、財務的に厳しく運営の継続が⼤変な事業所も多いと思います。
ですので、そのような理想を持った事業所がそれを貫けるような環境を国や地方自治体には作ってほしいと切に願っています。

船井総研
ありがとうございます。
今お話いただいた所も関連してくるかと思いますが、実際に訪問看護を運営していく上で、苦労したこと、⼤変だったことはありましたか?

沼⽥様
利⽤者の獲得という部分で苦労したのは、訪問看護というサービス自体をなかなか理解してもらえなかったことです。
訪問看護とはどんなサービスで、何をしてもらえるのか、どうやったら使えるのかなど、多くの方が理解されていませんでした。
パンフレットを工夫したり、丁寧に説明したり、なかなか⼤変でしたね。
その他で苦労したのは⼈材の確保です。
「訪問看護ステーション楓」を⽴ち上げてから5年が経ちますが、その当時のメンバーは1⼈しか残ってないですね。

船井総研
職員の入れ替わりは、やはり多かったですか?

沼⽥様
そうですね。
当時のメンバーは訪問看護の経験がない方がほとんどだったということもありますが、⼈間関係の問題も多くて⼤変でした。
また、新たに看護師を採⽤しようと思っても応募すらなくて簡単にはいかなかったですね。
採⽤や定着を促すうえで特に意識していることは処遇面での充実や働きやすい労働環境作りです。
処遇面に関していえば、訪問看護の経験がなくても前職の病院でのスキルを勘案して前職と比べて見劣りしない額に設定するようにしたり、訪問件数や内容に応じてインセンティブとなるような手当を設けたりするなどの工夫をしています。
働きやすい労働環境に関しては、常勤職員に1⼈1台の車を貸し出して直行直帰できるようにしたり、移動中や事務所に来なくても記録ができるようにiPad端末を持ってもらうなど、できるだけ職員の負担を減らして業務の効率化を図る取り組みをしています。

船井総研
⼈材の採⽤、定着というのはどこでも⼤きな課題ですよね。ちなみに、現在は看護師以外にもリハビリ職の方もいらっしゃるのでしょうか?

沼⽥様
「訪問看護ステーション楓」には、理学療法⼠と作業療法⼠が1⼈ずつ在籍しております。
訪問看護においては、看護のみならずリハビリのニーズも多いのが実態で、そのようなニーズに対して、「専⾨職の方はいませんか?」という問合せも多く寄せられていました。
あくまでも訪問看護なので看護がメインではありますが、それに不随する様々なニーズにもしっかり応えたいと思っています。
また、最近積極的に取り組んでいるのが、船でしか行けない離島にお住いの方へのリハビリの提供です。
もちろん移動に時間がかかりますし、経営的なことだけを考えれば採算性は低いので他の事業者はやりたがらないと思いますが、だからこそ誰かが担わなければならないことだと思いますので、私たちは今後も積極的に携わりたいと考えています。

船井総研
ありがとうございます。
2か所に⽴ち上げられた事業所は精神科訪問看護に特化されていると伺いましたが、始められた背景は何だったのでしょうか?

沼⽥様
福⼭市の「訪問看護ステーションこもれび」ですね。
3年半ほど前に精神科特化の訪問看護ステーションでの勤務経験がある方から、自分たちの精神科訪問看護のスキルを最⼤限に発揮でき、なおかつワークライフバランスが実現できるような働きやすいステーションを⽴ち上げたいという相談を受けました。
ただ、会社の設⽴はもとより経営をやりたいわけではないということでしたので、何度か協議を重ね、最終的に弊社で新たに精神科特化のステーションを⽴ち上げることにしました。

沼⽥様
私自身も精神科訪問看護については今後ニーズが高まると考えていましたし、事業拡⼤による経営面の安定や信頼の確⽴という部分でも、新たな地域での2か所目のステーションの⽴ち上げは⼤きなメリットがあると思いました。
私自身、精神科の訪問看護については深い知識を持ち合わせていなかったのですが、事業を始めてみると、改めて精神疾患を持っておられる方が地域で安定した生活を送るためには訪問看護の役割は極めて重要だと感じました。
実際、それまで公的な支援を受けておられなかった方が訪問看護を利⽤することによって、安定した在宅生活を送ることができるようになったケースが数多くありました。
今後も精神疾患を持っておられる方が当たり前に在宅で暮らせる環境を支援できるように努めていきたいと思っています。

船井総研
高齢者もそうですが、精神疾患を抱える方も⾮常に増えていますので、地域は異なっていても双方のノウハウを持つ会社の存在は、今後地域にも必ず求められていくと我々も感じております。
最後に、運営されている中で⼤事にされていることと、今後の展望を教えていただければと思います。

沼⽥様
弊社は「四方よし」という理念を掲げさせていただいております。
近江商⼈の哲学として有名な「三方よし」は「売り手よし、買い手よし、世間よし」というものですが、弊社はそこに「社員よし」を加え、弊社で働いてくれている社員の幸せの追求を目指しています。
社員は「売り手」に含まれるという考え方もありますが、実際に役員と社員では⽴場も違えば求める環境も違います。
「売り手」である会社がいくら利益を出しても、そこで働く社員が幸せでなければ意味がないと思っています。

沼⽥様
最後に今後の展望ですが、会社設⽴時からの理念はもちろん⼤切にしつつ、3か所目の拠点として尾道市に事業を拡げていきたいと考えております。
今は福⼭市と三原市で事業をしていますが、そこに尾道市が加わることにより、拠点間の距離が縮まって様々な相乗効果が期待できると思いますし、何より多くの地域で弊社の理想とする医療介護サービスを届けられるのではないかと考えています。

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