Q.介護事業の経費削減で効果的な取り組みは?
A.介護事業の経費削減で最も効果的なのは、コスト構造の大部分を占める「人件費の生産性向上」と、すぐに改善に着手できる「変動費・固定費の見直し」の2つに戦略的に取り組むことです。
1. 人件費の生産性向上(最大コストの最適化)
介護事業の総経費の約70~80%を占める人件費は、単に削減するのではなく、効率を高めることで最適化を図ります。
- ICT・介護テクノロジーの徹底活用
- 介護記録や情報共有にタブレットやスマートフォンを導入し、記録・事務作業に要する時間を削減します。削減できた時間をケアや専門業務に充てることで、職員の単位時間あたりの生産性を向上させます。見守りセンサーなどを活用し、特に夜間帯の人員配置の効率化を図り、夜勤手当など高コストな人員体制を見直します。
- 業務フローの標準化とムダの排除
- 事業所全体の業務フローを可視化し、重複作業、移動のムダ、過剰な会議など、非効率な作業を特定して削減します。役割分担を明確化し、介護職員はケアに専念、事務職員は請求や事務作業に専念する体制を構築し、それぞれの専門性を活かした効率的な配置を実現します。
- 労働時間管理の徹底
- 残業時間が発生する要因を分析し、残業を削減するための具体的なルールや仕組みを導入します。これにより、時間外手当の支出を抑制します。
2. 変動費・固定費の見直し(即効性のある削減策)
消耗品費や水道光熱費などの変動費、およびリース料や賃料などの固定費は、契約の見直しにより迅速な経費削減が可能です。
- 消耗品・備品の購買戦略
- 介護用品、おむつ、清掃用品などについて、複数の業者から見積もりを取得し、単価の安い業者に切り替えます。共同購買や大量仕入れを検討し、購買単価の交渉力を高めます。
- 水道光熱費・通信費の契約見直し
- 電力・ガスの自由化プランを活用し、契約会社やプランを見直してコストを削減します。電話、インターネット、携帯電話などの通信契約について、法人向けの一括プランや最新の安価なプランへの切り替えを検討します。
- 施設メンテナンス・リース契約の再交渉
- 清掃、車両、IT機器などのリース契約や保守契約について、契約内容が現状に見合っているかを精査し、不要なサービスを解約したり、料金の再交渉を行ったりします。
- ペーパーレス化の推進
- 介護記録やマニュアルを電子化することで、紙や印刷機のインク代といった消耗品費を削減します。
船井総研の提言:経費削減成功の要
介護事業の経費削減は、単価の安い業者に切り替えることから始められますが、最も効果が大きいのは「人件費生産性の向上」です。ICT導入や業務効率化によって職員の作業効率を高め、削減したコストを職員の処遇改善(特定処遇改善加算など)に還元することで、サービスの質を落とさず、持続可能な高収益体質を築くことが成功の鍵となります。
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