全国的に珍しい「共生型デイサービス(放課後等デイサービス)」の成功事例に学ぶ!介護事業者が地域貢献と収益改善を両立する秘訣とは?
「高齢者の笑顔と、子どもたちの笑い声が同じ空間に響く。」
そんな風景を目指し、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人光風会さまが、新たに始めたのが“共生型放課後等デイサービス”です。高齢者支援を長年担ってきた現場が、障がい児支援に挑む—その背景には、“地域に必要とされる施設であり続けたい”という強い想いがありました。今回は、光風会さまがどのようにして収益性と地域貢献の両立を実現されたのか、現場の声とともにお届けします。
【企業紹介】
社会福祉法人光風会さまは、特別養護老人ホーム(特養)を主体とし、ショートステイや居宅介護支援事業所など複数の介護事業を展開されてきた地域に根ざした法人です。
高齢者の減少やデイサービス市場の飽和といった課題に直面する中で、既存の通所介護(デイサービス)の運営継続と地域貢献の理念に基づき、全国でも稀有な「共生型放課後等デイサービス」の指定を受け、運営を成功させています。

(写真:センター長 田中 由香里 さま)
Q:御社が共生型放デイ開始の背景と経緯は何でしょうか?
A:当地域の高齢者デイサービスは飽和状態であり、高齢者も減少しているため、利用者は減少し、デイサービスは単体で赤字傾向にありました。
しかし、特養やショートステイもある法人として、デイサービスは入居につながる窓口の役割もあるため、閉鎖せずに継続していました。共生型サービスを始めたきっかけは、経営改善ではなく、職員から聞いた既存の放課後等デイサービスのサービス品質への問題意識です。
遠方で送迎に来てもらえない、希望する利用ができず利用者の必要性が重視されない、アレルギー対応の伝達ミスがあるなど、「利用者本位のサービスではないのはおかしい」と感じました。そこで、社会福祉法人として地域貢献の視点から支援できないかと模索し、共生型サービスが創設された際、「これならうちにもやれる」と、既存のデイサービスの空き枠を活用して、お子さんを預かる形で開始しました。

(写真:特別養護老人ホームアイリス)
Q:比較的収益性の高い生活介護ではなく、放デイを選択された理由と、既存デイの収益改善効果について教えてください。
A:地域で必要とされているサービス(障がい児支援)を提供したかったため、制度として実現できる放課後等デイサービスを開始いたしました。共生型では様々な加算(例:送迎加算など)はあまり取れませんが、それでも基本単位だけで高齢者デイの単位よりも高いと感じています。平日の授業終了後で430単位、休日利用で570単位が基本単位です。
収益面では、高齢者デイサービス単体ではどうしても月によって変動がありましたが、共生型放課後等デイサービスの利用(一日平均1.5名〜2名程度)が加わったことで、事業全体の収益性が大きく向上しました。安定的な単位収入がプラスされることで、運営全体のバランスが整い、継続性の高い経営が実現できています。こうした収益の安定性と改善効果は、デイサービスを続ける大きな原動力になっています。
Q:職員・利用者様の不安に対し、どのように対応し、乗り越えられましたか?
A:職員に対しては、高齢者介護専門ではなく、支援を必要としている方々に対してケアができるよう勉強してきたはずだ、子どもであっても大人であっても高齢者であってもそれは一緒だ、と説明しました。その結果、特に若い職員は興味を持ち、実際に子どもたちと時間を過ごすことで「アセスメントができるじゃないか」という自信につながりました。導入後に辞めた職員は出ていません。
高齢者の利用者様は、意外にも子どもを大好きだったりする方が多いです。
ただし、常に同じスペースで過ごすことはありません。学校から帰宅後にクールダウンが必要なお子さん向けに、デイサービス施設内の一室を改修し、放課後等デイサービス専用の部屋を設けています。
交流の時間(創作活動やおやつなど)は設けますが、高齢者の場で「走らない」「大きな声を出さない」などのルールは守っていただいています。
また、対応に困った際は部署の垣根を越えて皆で話し合う「ワンチーム」の文化があるので、職員の負担を軽減しています。
Q:積極的な営業なしに相談が来る、貴法人のサービスの成功の秘訣は何でしょうか?
A:私たちは、本人やご家族の目的、意向が優先される少人数制の個別対応を重視しています 。利用者が少ないため、個別対応が非常に多いです。
また、お子さんの支援だけでなく、そのご家族への支援、すなわち「世帯支援」に視点を移すことが基本であると考えています。
送迎の際に親御さんの生活状況や養育状況を確認するなど、加算にはならない部分ですが、こうしたきめ細やかなサポート体制が相談支援専門員様からの信頼性につながっています。
地域の中では、「光風会だから見てくれる」「難しい事例でもここなら見てもらえる」という認識を持っていただいており 、他の放デイになじめないお子さんが、集団生活に戻るためのステップのきっかけとなる場所にもなっています。
さらに、高齢者との交流のメリットも大きいです。例えば、職員が注意しても治らなかったお子さんの癖(鉛筆を食べるなど)を、高齢者の利用者様が「そんなことするとだめだよ」と先に言ってくれるようになり、行動が改善していくケースが見られます。
高齢者の方が面倒を見てくれることで、職員の負担が減るという相互扶助の強さが共生型にはあります。
Q:共生型サービス参入を検討する事業者へのメッセージと今後の展望をお聞かせください。
A:高齢者は今後減少していく一方ですので、社会福祉法人として全世代的にサービスを考えていかないといけないと考えています。
共生型デイサービスは、重心の方を預かるとかではないため、障がい者支援に取り組むきっかけとしてはハードルが低いでしょう。
収益改善の側面もありますが、地域に根差した社会福祉法人の地域活動として、地域で必要とされるサービスを展開していくという理念に基づき取り組む意義は非常に大きいと思っています。
また、施設自体が社会資源となり、防災・災害時の役割も大きいです。当法人は福祉避難所にもなっていますが、平時から施設で過ごすことに慣れていれば、災害時や大停電時にも、障がいのあるお子さんとそのご家族が安心して過ごせる場所を提供できます。
今後の展望としては、地域で放課後等デイサービスが不足している状況ですので、将来的には障がい者向けのグループホームを含め、様々な障がい福祉サービスを展開していくべきだと考えています。
しかし、質の高い支援を維持するため、有資格者の確保と質の担保を厳しく行っていくことが課題です 。全世代型の法人になっていくためにも、人材確保は必須であると認識しています。












