株式会社つむぎ 代表取締役 原田伸吾 様
皆様、お世話になっております。
今回は、2012年に鳥取県で独立し、訪問看護ステーション等を運営されている、
株式会社つむぎ 代表取締役 原田伸吾様に、
立ち上げ前から現在、今後の目標についてお話をお伺いいたしました。
船井総研
これまでのキャリアや、開業に至った経緯について教えてください。
原田様
鳥取の専門学校に在学中、4年次の3週間の長期実習(沖縄)に行き、そこで「いきがいクリエーション」の会長であり、自分の師である田村浩介さんに出会いました。その頃から4,5年かけて志が同じ仲間を集め、起業しました。今は社会福祉士の副社長と一緒に、共同で1年間教員をしながら準備して、その後立ち上げて、今年で10周年になります。
船井総研
最初からとんとん拍子で事業を拡大されているという事例はなかなかないですね。
原田様
地域のニーズに応えていくにつれて大きくなった印象があり、私たちが通所介護で出会った利用者1人1人に目標設定をして、その人の重要な作業をできるようにしようという関わり方をしてきました。しかし、通所介護には定員があり、私たちが関わって救える方も人数が決まっています。本当に地域のニーズに応える形で拡大したのがうちの流れだと思います。
船井総研
素晴らしい広がり方だと思いました。お話を聞いていると順調であると感じますが、大変だったことや苦労したことはありますか?
原田様
子供の方の事業所と訪問看護ステーションを同時に立ち上げたのですが、そこの経営的なやりくりが3年間程大変でした。訪問看護も、通所介護ではうちの施設の中でも関わりがほとんどであり、全員に対してお家や地域の中で介入することが難しいという状況の中で立ち上げました。実際に家の中で利用者がやりたいことや地域の中でやりたいことが出来るような直接的な支援をするには訪問が必要だと感じ、訪問看護ステーションを立ち上げました。経営的に安定するのに約3年かかるという実感があり、実際に依頼件数が安定するのに時間を要しました。
船井総研
結構幅広く、普通の介護事業や障害のお子様関係の事業をされておりますが、それぞれの事業に関する情報はどのように集めていましたか?
原田様
実際の地域のニーズに関しては、関わる方の生の声から情報を集めていました。小児に関しては、スタッフの中にお子様が発達障害をお持ちのお母様がおられて、そのお母様の声やそのお母様の繋がりの方の多くの声から情報を集めました。
船井総研
ありがとうございます。最初に独立するまでの経緯についてお伺いしたいのですが、どうして独立しようと思われたのですか?
原田様
鳥取に作業療法を持ち帰るという気持ちがあり、起業することは最初から決めていました。毎年年末年始に帰省していたのですが、その度に友達の家を借りて介護福祉士、看護師、リハビリテーションのセラピスト等、友達伝いで事業に興味のある方に私のプレゼンを聞いていただいて、理念に共感していただいた方を4、5年かけて集めました。
船井総研
強い使命感を持たれていたのですね。
原田様
田村さんや田村さんの師匠、琉球リハビリテーション学院の理事長さん、ゆめの湖村の藤原しげるさん、そのほか僕の諸先輩方にお世話になる中で自分の中でわけのわからない使命感みたいなものを感じてて絶対に鳥取に持ち帰らねばと思いました。
船井総研
素晴らしいですね。それだけ長く計画されていると、開業資金も結構貯められていたのですか?
原田様
違います。勉強会などの自己投資をしており、貯金は殆どない状態で始めました。自分の持ち株分ぐらいしか購入できない資金状態であり、両親に借金をしたり、今の副社長、副社長のご両親から少しいただいたりするなど、皆さんのお力を借りて創業したということが実際のところです。
船井総研
初期投資はどれぐらいかかりましたか?
原田様
2500万円の借入をして始めました。主に賃貸、マシンのリース代等の設備投資で2000万ほどかかり、運転資金が約500万円です。後は借入を行い、自己資金としての約800万でやりくりをしていました。
船井総研
初期投資2000万円のうち、最も多くの資金を使ったのはどこですか?
原田様
建物です。建物は結構大きくて、2階建てで総面積816㎡ぐらいあります。そこを改装し、外壁などの整備費も併せてそのくらいになりました。
船井総研
ありがとうございます。子供と訪問看護ステーションを同時に立ち上げたとのことで、資金的なやりくりが大変だったと思いますが、例えば人材採用での苦労はありましたか?
原田様
リハビリステーションのセラピストに関しては人手に困ったことがなく、私の教員時代の教え子や実習生が入社してくれたりしました。今年だと東京や広島から来てくれた人たちが入社するなど、セラピストに関しては困ることがあまりなかったです。介護福祉士さんに関しては、求人を出しても応募がなかなかなかった時も時期によってはありました。
船井総研
セラピストに関しては、採用に向けた特別な取り組みをしなくても取れていたのですか?
原田様
そうです。ただ、今は来てくれた子たちに、来てよかったなと思ってもらえるような教育システムやフォローできるようなシステムを充実させたいと考えています。また、県外から就職したいと思える企業になるために、私たちのホームページをもっときれいにしなければいけないという課題はあります。
船井総研
今の研修体制はどのようになっていますか?
原田様
小児で必要な研修は、教員のときの元同僚が小児の分野においてベテランであり、知識、技術、経験もとてもあるので、その方に任せています。介護系に関しては、基本的な情報で求められていることなどは、基本的に全部動画で見るシステムを用意しています。セラピストに関しては、技術面や知識面に関して取り扱う、セラピストだけの勉強会に取り組んでいます。
船井総研
集客についてお伺いしたいのですが、ホームページを活用した集客、マーケティングは重視されていますか?
原田様
集客ということに関して、現状利用者に待っていただいていることの方が多いので、ホームページはそこまで必要ではないと考えています。現状、私たちにとってホームページは求人の意味合いが強いです。
船井総研
ホームページ経由でのお問い合わせが多いのですか?
原田様
そうです。実習生で来てくれるパターンが1番多いのですが、採用に関して鳥取県内の子にターゲットを絞ってはいません。うちに興味を持ってくれて、理念に共感してくれる方が来てくれていて、中には自分の地元に持ち帰りたいと考えている人もいるので、それを応援したいと考えています。全国に向けて「うちはこういう会社ですけどどうでしょうか?」という魅力をアピールできる媒体にホームページがなることを理想としています。
船井総研
ありがとうございます。全国的にデイサービスだとコロナ禍の影響で新規の方が来ないケースもありますが、そのような影響はありませんでしたか?
原田様
売り上げが落ちたという影響はないです。鳥取も比較的コロナの感染者が増加しましたが、そこまで多くはないという地域柄もあると思います。
船井総研
全国的に見て売り上げが落ちないというケースは珍しいと思います。
稼働率もほぼ100%を超えていますか?
原田様
約90%です。全事業所目標は稼働率約90%にしてます。
船井総研
事業所の売り上げの柱になっているのはどの事業ですか?
原田様
うちはデイサービスが柱です。
船井総研
訪問看護も稼働率は上がっていますが、売り上げはまだそこまでという感じでしょうか?
原田様
そうですね。訪問看護はスタッフの人数が多くなく、働きやすさも考えながら大規模化を進めていきたいと思っています。
船井総研
事業所よりの話になりますが、お客様からどのような声をいただくことが多いですか?また、お客様はつむぎ様のどの点が良いと思ってくれていますか?
原田様
私たちの強みは、リハビリテーションが利用者の生活の中でしたいこと、周囲の「これが出来てほしい」といった要望を叶えることが出来ることです。実際に、したいことを、したい環境でしたい人と一緒にできるようになるというのが私たちのミッションであり、それは職種関係なくスタッフ全員がその思いをもっているのが私たちの強みです。こうした点は、お客様からも評価していただけていると思います。
船井総研
ありがとうございます。地域のニーズに応える形で鳥取に作業療法を広めるという形で事業を広めてきたと思いますが、今後の展開や今注目してしていることは何でしょうか?
原田様
私たちの最終的な理念として「すべての人が健康と感じる社会を創ります」と定めておりますが、健康は単なる疾病の有無だけでなく、WHOの定義にもある通り、生活の満足度や幸福感が含まれています。そのために、前年度は家庭養育サポート事業を鳥取市から委託を受け、ヤングケアラーや生活困窮者にお弁当を配達しながら家庭の状況やお子さんの状況を確認し、必要なサービスにつなげる事業を行っております。色々な方や世の中を知らないといけないと考えているので、世の中を知って、その方々のストレングスを活かしてみんなが支えあって生きていけるような、弱みをお互い支えられるような街を作りたいと考えています。
船井総研
現在は、皆さんが支えあえる社会を創るために、地域食堂など小児系の活動に専念されているということでしょうか?
原田様
そうです。介護保険法や児童福祉法でも救われていない人たちがいる世界を知らなければならないと考えています。具体的には、就労支援等も考えています。また、高齢者の方に対しても、いつかは入居施設を開設したいと思っています。
船井総研
現在6つの事業所を展開されていて、今後も入居施設等を含めて拡大していきたいというお話でしたが、今後同じようなリハビリ職や、PT・OTなど資格を持った方が独立して開業していく展開になった場合、それを勧めることはできますか?
原田様
正直、儲かるからやるという考え方をお持ちの方にはおすすめしないです。ですが、みんなが住みやすい街づくりを進める際に、リハビリテーションの考え方はとてもマッチすると思います。その取り組みを一緒にしてくれる起業家の方が多いほど、良いことだと思います。
船井総研
最後に、事業の順番について、なぜデイサービスからスタートしたのか教えていただきたいです。
原田様
私がもともと沖縄の通所リハビリテーションで働いており、副社長も当時老健やデイサービスで働いていて、ケアマネジャーの資格があり、お互いの強みを活かせるのはデイサービスだと考えたからです。
船井総研
その中で、他のサービスに展開したのは、地域のニーズや声があったということですか?
原田様
そうです。
船井総研
特に訪問系のサービスに関して、地域包括ケアを考えて在宅を強化するというのが国の流れですが、実際に社長は在宅ニーズを感じていますか?
原田様
鳥取市はまだ訪問をしっかり使っていく状態であり、在宅を使って地域包括ケアシステムを支えるという動きは少ないです。ですので、今後在宅は絶対重要と私は考えており、なかなか売り上げが伸びなくても今後必要にはなってくると思っています。
船井総研
私たちのお客様でも、通所よりも訪問系の方がダメージが少なく、コロナでむしろ業績が伸びたというお客様が多いという現状がありましたので、質問させていただきました。
インタビューは以上となります。この度は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
原田様
ありがとうございました。