なぜ入院予防なのか
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船井総合研究所の津田です。
急に冷え込んで来ましたが体調を崩されていませんでしょうか。
利用者の風邪やインフルエンザも心配な季節です。
今日は入居施設の入院予防についてお話したいと思います。
早速ですが質問です。
皆様の施設では月に平均何名が何日入院されていますか?
意外と即答できる方は少ないのではないかと思います。
稼働率という経営指標は入居率と比べ、こと施設経営では軽視されがちです。
しかし収益には大きな影響を及ぼします。
入居者1人当たりの介護報酬を8,000円/日とした場合、1ヵ月入院で不在にすると24万円の減収です。
これが2人になると約50万円売上が下がることになります。
入院が増えることは、営利率数%の小規模施設なら即赤字転落を意味しますし、大規模施設なら100万円単位の巨額のマイナスをもたらします。
入院の発生とはそれほど重いものなのです。
また質問です。
皆様の施設では入居者の入院にはどのような理由が多いですか?
これもすぐに答えられる方は少ないのではないでしょうか。
高齢者の体調の不調には、本人の持病の悪化や、体力低下に起因するものもあれば、セルフケア不足によるものや、不衛生な生活環境によるものもあります。
転倒が多い場合は、日々の機能訓練の実施状況や、見守り体制に問題があるかもしれません。
いかに不調の多い「お年寄り」といっても、その要因は様々。
裏を返せば必ず原因があるということです。
どのような対策を取るのであれ、まずは原因を特定し傾向を読み取る必要があります。
最後の質問です。
皆様の施設では仮説をもって入院予防策を立てていますか?
もし先の2つの質問に即答できたのであれば、恐らく入院予防のための課題意識と仮説をしっかりとお持ちなのではないかと思います。
逆に質問に答えられない場合は、入院予防の取り組みは行なっていても、「一般論の実践」でしかないのではないでしょうか。
一般論の実践でも効果は期待できます。
しかし効果を測定することはできません。
測定できない取り組みは、改善に繋げることも継続することも困難です。
結論です。
入院予防において重要なのは、PDCAのサイクルを回し、持続することです。
そのためにまずは現状認識を行ない、Planを立てて下さい。
現状認識を行なうにも、入院記録を集約していないという施設も少なくないでしょう。
その場合は、入院発生リストを作成し、対象者の介護度、疾患、入院日、入院期間、入院の直接的理由、背景を記録することから始めて下さい。
その上で利用者個別の対策と、施設全体での対策を検討します。
計画を立て、実行に移したら、一定期間を経てミーティングで振り返りを行なって下さい。
成果が出れば継続し、出なければ手法を変えて改善に取り組み、また振り返りを行ないます。
—入院予防のポイント—
①入院の発生状況を確認する
②現状の課題に基づいた計画策定を行なう
③朝礼やミーティングで実行を指示する
④一定期間後ミーティング等で評価する
⑤改善策を実行する
やみくもに研修を行なったりマスク着用を義務付けたりしても、エビデンスに基づかない取り組みは、いわば信仰の世界です。
それでは数字は維持できませんし、何より利用者の生活を守れません。
入院発生は経営上の痛手ですが、それ以上に利用者にとって大きな損失です。
何ら根拠ある取り組みをせず、24時間365日の安心と健康を期待して入居した利用者の信用を裏切る。
そんなことにはならないようにしたいものです。
日ごとに寒さが増し、空気の乾燥も気になるこれからの季節。
入院予防のための取り組みを「特にしていない」もしくは「しているが不十分かもしれない(よく分からない)」というのであれば、まずは何のための施設なのかを改めて確認し、現状を正確に把握することから始めて頂ければと思います。
この記事を書いたコンサルタント
津田 和知
大手介護事業者の介護付き有料老人ホーム施設長を経て、船井総合研究所に入社。前職の経験を活かし、現場主義で問題の本質や改善の糸口を掴み、経営者のサポートを行う。コンサルティング領域は、介護施設の立ち上げや収支改善、訪問看護ステーションの立ち上げ、人事制度構築など。