介護業界の現状と将来展望

2025年3月17日配信

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介護業界の現状と将来展望

1-1. 日本の高齢化と介護ニーズの増加
◆日本の高齢化率の推移と将来的な見通し
2025年は団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になり「2025年問題」が本格化する年です。2040年には高齢者人口がピークに達し、65歳以上が国内人口の約35%を占めると予測されています。こうした状況により介護サービスの需要は今後高まっていくと言えます。

◆要介護者数の増加傾向とその背景
こうした高齢化に伴い、認知症高齢者数の増加が深刻な問題となります。2025年に認知症高齢者数は700万人を超え、65歳以上の5人に1人が認知症高齢者になることが予測されます。そのため介護サービスの認知症対応、重度者対応が求められています。また政府の実態調査では、要支援の段階での適切な支援提供により、要介護度の進行を遅らせることが明らかになっています。

1-2. 介護人材の不足と課題
◆介護職員の現状と人手不足の深刻化
介護事業の課題としては慢性的な人手不足が挙げられ、今後もさらに深刻化していきます。2025年には約32万人、2040年には69万人の介護職員が不足すると見込まれています。特に地方では人材確保が難しく、介護職員の高齢化も進んでいるため、介護事業全体に影響があります。

◆人材確保が難しい要因とその影響
人材不足の要因としては、賃金の低さ、労働環境の厳しさ、資格取得のハードルの高さ、さらには社会的評価の低さが影響を与えています。他業種に比べて給与水準が低いことにより、若年層の就職意欲が低下し、また夜勤や身体的負担が大きいことから、離職率が高まる傾向があります。このような課題を解決するためには、厚生労働省が推進する処遇改善をもとに待遇改善を図ることが求められます。加えて看護師や医療スタッフの確保も難しくなってきているため、介護と医療の連携強化が求められます。

2. 介護業界が直面する主な課題

2-1. 財政面での課題
◆介護保険料の増加と財源確保の難しさ
介護保険制度による財源確保は年々困難になっています。要介護者の増加に伴い、介護給付費は年間10兆円を超える水準に達しており、今後も増加が見込まれます。これに伴い介護保険料の上昇や介護報酬の改定が行われています。

◆介護施設の経営状況と収支バランス
特に事業経営においては、介護報酬改定による収益の変動、介護人材の確保・育成にかかるコストの増加、補助金や助成金に依存した経営体制のリスクが増えています。そのため今後は、収益の安定化を図るためにサービスの多様化や新たな収益モデルを構築する必要があります。例えば地域包括ケアシステムとの連携を強化し、訪問介護や通所介護を組み合わせたサービス提供を推進することで、収益を安定化することができます。

2-2. 老老介護・認認介護の増加
◆高齢者同士の介護の現状と問題点
「老老介護」とは高齢者同士が介護をする状況を指し、特に80歳以上の親を60〜70代の子どもが介護するケースが増えています。こうした状況が進行する背景には、核家族化と単身高齢者の増加、地域社会のつながりの希薄化、介護施設の不足と入所待機の長期化が関係しています。

◆認知症患者同士の介護がもたらすリスク
また「認認介護」と呼ばれる、認知症の配偶者を認知症の高齢者が介護する状況も深刻化しています。認認介護の増加により、介護負担の増大だけでなく、虐待や介護放棄、孤立死のリスクも高まっています。こうした状況の原因としては地域社会のつながりの希薄化や介護施設の不足、それによる入居待機利用者の増加が挙げられます。介護事業者としては、地域包括ケアの強化や訪問介護サービスの拡充により、支援体制を充実させる必要があります。

2-3. ヤングケアラーの増加
◆若年層による介護の実態と社会的影響
家族の介護を担う若年層(ヤングケアラー)の増加も社会問題となっています。家族の介護をする10代・20代の若者が増えており、学業や就職の機会を逃してしまう、精神的・身体的な負担が大きい、社会的な支援が不十分といった問題が発生しています。事業者としては、家族向け支援プログラムの強化や、ヤングケアラー向けの相談窓口の設置を検討することが必要です。学校や地域団体と連携し、ヤングケアラーが適切な支援を受けられる体制を整備することで、社会全体での支援が可能になります。

3. 介護業界の将来性と展望

3-1. テクノロジー導入による業務効率化
◆介護ロボットやICTの活用事例
近年進んでいる介護業界におけるテクノロジー活用は、2025年にさらに活発になることが予想されます。
・介護ロボット: 移乗支援や見守りロボットの普及
・ICTの活用: AIによるケアプラン作成、記録など書類のデジタル化
・遠隔診療の拡大: 訪問診療やリモート介護相談の導入
これらの技術により現場職員の事務業務における負担を軽減することで、現場業務に工数を集中する体制を整えることができます。

◆デジタル化がもたらす効果と課題
デジタル化の進展により、介護業務の効率化と質の向上を実現することができます。例えばAIを活用したケアプランの作成や、オンラインでの家族との情報共有システムも活用が進んでいます。一方で、デジタル化の課題も浮き彫りになっています。ICTの導入には初期投資が必要であり、特に中小規模の事業者にとっては経済的負担が大きいという問題があります。また、高齢者や介護職員の中には、デジタル技術に不慣れな人も多く、スムーズな運用には教育やサポート体制の整備が不可欠です。

3-2. 人材育成とキャリアパスの構築
◆介護職のキャリアアップ支援策
介護職員のキャリアアップ支援が求められており、資格取得支援や研修制度の充実が重要になっています。また、介護福祉士の資格取得を奨励し、専門性を高めることで、職員のモチベーション向上につなげる施策が必要です。

◆処遇改善と働きやすい職場づくり
介護職員の給与アップ、シフト管理の最適化、ワークライフバランスの確保などが重要です。職員の定着率を高めるために、働きやすい職場環境の整備が求められます。

介護施設経営者が取るべき戦略

4-1. 経営の安定化に向けた取り組み
◆多角的な収益源の確保とリスク管理
収益性の低い事業の立て直し、成長が見込まれる事業への集中投資をおこなうなど事業ドメインを整理し、複合化・多角化経営を視野に入れながら会社の事業ポートフォリオを最適化していくことが重要です。介護報酬に依存しすぎない経営体制を構築するためには、自費サービスの導入や地域との連携が求められます。この取り組みとしてはリハビリ特化型デイサービスや、介護予防プログラムの提供などが挙げられます。

◆地域ニーズに応じたサービス展開
地域包括ケアの考え方を取り入れ、自治体や医療機関と連携しながら、在宅支援や訪問介護の強化を図ることが経営の安定につながります。在宅支援、通所リハビリ、医療機関との連携強化など、地域密着型のサービスを提供することが必要です。

4-2. 人材確保と定着のための施策
◆魅力的な労働環境の提供と福利厚生の充実
介護職員の定着率向上には、物理的・精神的な負担を軽減し、職場への満足度を高める施策が必要です。職場環境の改善においては、職員同士のコミュニケーションの円滑化、働く意欲を持たせる勤務体制の確立、適切な労働時間管理、ストレスケアの仕組みが重要となります。職員同士のつながりを強化し、定着率を向上させるために職員紹介制度を導入することも有効です。職員紹介を通じた採用は求人広告費の削減にも寄与するため、経営面でのメリットも期待できます。また、給与や手当といった待遇面の改善も職員のモチベーションを向上させる要素です。介護職員処遇改善加算などの活用により、基本給の向上や賞与の増額、資格取得支援を行うことで、専門職としてのキャリアの魅力を高めることができます。さらに、退職金制度や育児・介護休暇制度の充実、健康管理サポートなど、職員が長く安心して働ける環境を整備することが求められています。

◆採用活動の強化と人材育成プログラムの導入
採用活動においては、求職者にとって魅力的な求人を作成し、多様な採用チャネルを活用しながら介護という仕事の魅力を発信していくことが重要です。特にSNSや動画コンテンツを活用した広報活動、地域イベントへの参加など、応募者との接点を増やす施策が求められます。さらに採用基準の見直しや応募者の多様化を図ることで、新しい人材層の確保につなげることができます。人材育成の観点では、新人職員に対する教育プログラムの実施が不可欠です。入職後の研修制度を整備し、経験による実務能力の向上だけでなく、職場適応をスムーズに進める仕組みを構築する必要があります。

まとめ

◆介護業界の現状と未来を踏まえた経営者への提言
2025年の介護業界は、多くの課題を抱えながらも、テクノロジーの活用や経営の多角化によって新たな成長のチャンスを迎えています。特に以下の3点が重要なテーマとなります。
・テクノロジーの活用による業務の効率化
・人材育成と働きやすい環境づくり
・多角的な収益源の確保と地域ニーズへの対応

◆持続可能な介護サービス提供のための今後の方向性
持続可能な介護サービスを提供するためには、事業所ごとの特色を活かしながら、地域ニーズに応じたサービス展開を進めることが求められます。経営の安定化を図るためには、収益の多角化や行政との連携強化が不可欠です。これらの要素を総合的に考慮し、時代の変化に対応した経営に転換することが必要です。

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この記事を書いたコンサルタント

改正 大知

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