【地域一番の農家になりたい】農福連携で「メンバー」と共に歩む未来
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みなさま、こんにちは。
株式会社船井総合研究所 福祉・保育グループの岩井です。
今回は弊社で取材をさせていただきましたご法人様の取組みについてご紹介させていただきます。
今回ご紹介させていただく法人様は、京都府京田辺市で就労継続支援B型事業所「三休」を運営する、三休合同会社様です。生産活動は農福連携として万願寺とうがらしやハーブの栽培などを行いつつ収穫品を使ったドリンクやスイーツを提供するカフェ運営を行っています。今回は三休の施設長の世古口敦嗣様と目標工賃達成指導員の八木慎一様にお話を伺いました。
就労継続支援B型事業所三休では、利用者を「メンバー」と呼び、スタッフもメンバーも同じ目線で「チーム三休」を構成し組織を作り上げています。
農業経験ゼロから農福連携をスタートした三休の道のりと未来の展望について迫ります…!
①三休合同会社設立まで~挫折から生まれた新たな道~
三休合同会社の設立は、世古口様のある強い思いから始まりました。27歳の時、発達障がいのある友人が障がい特性が理由で仕事を辞め、無気力な生活を送る姿を目の当たりにした世古口様。「こんなぼくでも働ける場所を作ってほしい」という友人の言葉が、世古口様の心を大きく揺さぶりました。
その後、兵庫県で活動する社会福祉法人の理事長と出会いA型を含める障がい福祉に特化したビルを建設する計画に参加し、関東の花屋で研修を受けるなど、準備を着々と進めていました。しかし、共同で事業を行うはずだった理事長から突然の計画中止を告げられました。世古口様は、落胆しながらも、別の道を模索することになりました。
そんな時、転機が訪れます。以前から交流のあったアパレル会社「JAMMIN」の社長・西田太一様から、一緒に事業を立ち上げないかと誘われたのです。社会貢献活動にも積極的に取り組むJAMMIN社長と意気投合し、世古口様は新たな事業を立ち上げることを決意します。
こうして誕生した三休合同会社。当初は、障がいのある人たちのアート作品を商品化するプロダクトデザイン事業を計画していました。しかし、ここでもまた計画は思うように進みません。一緒に働くはずだったスタッフが離脱し、事業は暗礁に乗り上げてしまったのです。
しかし三休オープンに向けた地域住民との月一話し合いで、地主や農家の人々から、地域の深刻な農業の担い手不足について話を聞いたのです。「農業」という予想外なキーワード。そして、当時注目され始めていた「農福連携」という言葉。世古口様は、この出会いをきっかけに、全く新しい方向へと舵を切ることになります。
②なぜ「農福連携」を選んだのか?
「障がいのある人が農業を通して社会に貢献できる」。農福連携は、農業の担い手不足解消と障がい者の就労支援という、二つの社会課題を同時に解決できる可能性を秘めた取り組みであり、世古口様は農福連携の可能性に強く惹かれました。そして世古口様はJAMMIN代表の西田太一様、八木慎一様とともに農福連携を行う事業所、就労継続B型事業所三休を立ち上げました。
しかし、農業未経験の世古口様、八木様にとって、農業部門を立ち上げることは大きな挑戦でした。会社にもメンバーにも農業経験者は一人もいません。時には500株の万願寺唐辛子を全て水没させてしまった苦い体験もされました。それでも、諦めずに地域の先輩農家から指導を受け、メンバーとともに一から農業を学び、試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ事業を軌道に乗せていったのです。
③就労継続支援B型事業所「三休」の工夫
農福連携には、農業面、福祉面の側面から様々な課題が立ちはだかります。これらの課題に果敢に挑戦し、独自の工夫を凝らして乗り越えてきました。
農業面での課題と工夫
初期段階では、適切な栽培方法の確立に苦労しました。1年目の農業収入はたったの14万円、3時間かけて5箱ぐらい作った菜の花は400円でした。しかし責任体制を明確化し、作物の多角化を進めた結果、昨年農業収入600万円を達成しました。また夏場の高温対策として、作業時間帯の変更や鷹の爪のヘタ取りという室内作業導入など、様々な工夫を凝らしています。
鷹の爪のヘタ取りはスタッフとメンバーが話し合いを続けて導入が決まったそうです!
福祉面での課題と工夫
始めた当初はアパレルの会社がやり始めた事業という目で見られたことで相談支援事業所からの紹介が一切なく、開所半年でメンバーは2名程でした。しかしSNSなどを活用した情報発信や、メンバーへの直接的なアプローチを行ったことで営業活動をせずとも月2、3件はお問い合わせが来るようになりました。
農業は重労働であり、障がいの特性によっては作業が困難な場合もあります。三休ではメンバーの「できること」を最大限に引き出し、「得意なこと」を活かせる仕事や役割分担を重視しています。メンバーとのアセスメントやモニタリングでは「WILL・CAN・MUST」のフレームワークを使用してメンバーの作業や目標を整理しています。また一般就労や施設外就労などの目標設定をサポートし、段階的にステップアップできる環境を提供しています。
④未来への展望 ~地域社会とともに成長する~
「京田辺市で1番の農家になることが目標なんです!」
昨季の万願寺とうがらしの出荷量は三休が地域一番であったそうで、農協の方から「三休さんは福祉という目ではなく一般的な農家として関わっている」と言われたそうです。この言葉を言われた時、世古口様は本当に嬉しかったそうです。今後は飲食店と加工場を併設した新しい事業所を設立し、A型事業所、B型事業所、農業法人を統合した事業モデルを確立し、障がいのある人が段階的にステップアップできる環境を構築することで、より多くの人が活躍できる場を創造していきたいと世古口様は語っています。
また伝統野菜であるエビイモの栽培にも力を入れていくそうです。後継者不足が深刻化する中、障がいのある人が伝統野菜の担い手となることで、地域貢献に繋がります。
「障がいのある人が支援されるじゃなくって逆に地域課題を解決する側に回ったらすげえかっこよくないですか?」
三休合同会社は、単なる就労支援の場ではなく、障がいのある人が「支援される側」から「課題を解決する側」へと変わる希望に満ちた未来を描いています。農業を通して、一人ひとりが喜びを感じ、いきいきと輝ける社会の実現を目指し、三休はこれからも挑戦を続けていきます…!
世古口様、八木様、この度は取材へのご協力誠にありがとうございました!
三休合同会社 Instagram
https://www.instagram.com/sankyu_kyoto39/
船井総合研究所障がい福祉サービス経営研究会 公式HP
https://lpsec.funaisoken.co.jp/study/kaigo-keiei/112662/
この記事を書いたコンサルタント
岩井 愛斗
大学卒業後、船井総合研究所に新卒入社。 現在は障がい福祉業界専門のコンサルタントとして、 主に就労支援事業や障がい者グループホーム、児童発達支援、放課後等デイサービスの新規開業、業績UP、事業活性化を担当している。 また、WEBサイトや生成AI活用、SNS運用による採用・集客支援も得意としている。 経営者と現場の双方に寄り添う支援を目指している。