高齢化がすすむ中国での介護業界の実態
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皆さん、こんにちは!
本日は高齢化が著しく進んでいる中国の介護事情についてお伝えします。
世界人口の2割を占めている中国。国連の推計によると、2020年には高齢者人口が1.7億になると推計されており、その背景には1975年から2015年まで行なっていた「一人っ子政策」があります。中国も日本と同様に、子ども1人で両親の介護を担っていく国になっていくのです。
中国政府も昨年から介護を重視し始め、北京、上海を含む15都市で介護保険の導入を始めました。政策の後押しもあり、中国介護市場は160兆円に成長していくといわれています。そのため中国では現在、様々な業界の企業が介護業界に参入し、急速に介護事業・サービスが整備されているところです。
中国においては介護業界そのものがまだ導入期で、かつ変化のスピードが速すぎることもあり、業界動向や業態整理、各種統計データなど、今では日本に当たり前にあるような情報が整備されていないのが実態です。
そこで、中国最前線の介護実態調査のため、昨年は複数回に渡って中国各地に滞在し取材を重ねました。現在の中国介護の実態は、2000年に介護保険が始まった頃の日本に似ていると感じています。介護施設は社会福祉法人(日本でいわゆる特養)が大多数を占めますが、地元の民間企業が規模は小さいながらも施設運営しており、地域のインフラになろうとしています。
一方で、他業界から大手保険会社やディベロッパーが参入しており、CCRCのような大規模施設の立ち上げをしています。社会福祉法人は政府からの手厚い補助金で安定運営、他業界から参入した高級CCRCは不動産所有権や民間介護保険の販売で収益を上げているのに対し、地元民間企業はビジネスモデルが確立していないため収支が厳しいのです。
すべての介護事業所に共通する問題点は、利用者に対して適切な介護を提供できていないこととで、介護士への教育が充分ではないことです。
他方、中国はハード面やIoT、ビックデータなどのインフラが進んでいます。ハード面では、日本の設計士を招いて日本的な老人ホームがあったり、初期費用5000万円クラスの富裕層向け老人ホームも多く存在します。
ビックデータとIOTの活用では、家政婦派遣・訪問介護企業がIT企業と合併し、全国15万人の顧客データと2万人の従業員データを活用して、だれが、どこで、どんなサービスを受けているかをリアルタイムで把握できるシステムや、全国の利用者と繋がれるプラットフォームをつくっていつでも利用予約ができるシステムなどもすでに運用に乗っています。中国介護事業者は日本や欧米諸国の技術を受け入れる柔軟性や目線の高さを持っており、その成長スピードの速さに驚かされることも多くありました。
やがて、介護技術やサービス品質は、中国人技能実習生が日本に来て学ぶ。経営や運営の効率化は、日本企業が中国のサービスを購入する。こうした日中交流が近い将来当たり前になる可能性を感じます。劇的なスピードで変化・成長を遂げている中国介護市場、注目の価値ありです。
【介護サービス経営研究会】
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この記事を書いたコンサルタント
沓澤 翔太
デイサービス、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの新規開設、収支改善、異業種からの介護事業への新規参入支援などを手がける。現在は、主としてデイサービスや有料老人ホームの利用者獲得や新規開設を中心にコンサルティングを行っている。 介護事業のコンサルティングの他、療養病床の転換や訪問診療など、医療業界のコンサルティングや、医療器具の販売促進についても実績を持つ。