児童発達支援や放課後等デイサービスの運営において、障害のある子どもたちが地域の保育所や幼稚園、学童保育などの一般的な集団生活へスムーズに移行できるようサポートすることは、極めて重要な役割です。
こうした地域社会への参加(インクルージョン)を促すための相談援助や連携体制を高く評価するのが「保育・教育等移行支援加算」です。2024年度(令和6年度)の障害福祉サービス等報酬改定では、これまでの「退所後のサポート」だけでなく、「退所前の準備・連携」も新たに評価対象に加わり、算定機会が大幅に拡充されました。
本コラムでは、公的資料に基づき、最新の算定要件、単位数、実務上の注意点、そして間違いやすい公的Q&Aまでを丁寧に解説します。
保育・教育等移行支援加算とは?概要と対象業種
保育・教育等移行支援加算は、障害児通所支援事業所を退所し、地域の保育・教育等の集団生活(保育所や幼稚園など)へ移行する児童に対して、退所前の移行に向けた調整や、退所後の相談援助を行った場合を評価する報酬です。
対象となる業種
- 児童発達支援(センター型含む)
- 放課後等デイサービス
- 共生型児童発達支援・共生型放課後等デイサービス
- 基準該当児童発達支援・基準該当放課後等デイサービス
未就学期や学齢期において、事業所の中だけで完結せず、子どもが地域社会の中で途切れのない支援を受けながら育っていけるよう、関係機関との「架け橋」となる業務を後押しする目的で設定されています。
単位数と令和6年度報酬改定の見直しポイント
2024年度の報酬改定により、本加算の評価体系は「退所前」と「退所後」のプロセスに細分化され、それぞれの取組を組み合わせて算定できるようになりました。単価はいずれも「1回につき500単位」です。◆保育・教育等移行支援加算 改定前後の算定機会と単位数比較表
| 改定後の算定区分と上限回数 | 単位数(1日につき) |
|---|---|
| 退所前に移行に向けた取組を行った場合 | 500 単位 / 回(2 回を限度) |
| 退所後に居宅等を訪問して相談援助を行った場合 | 500 単位 / 回(1 回を限度) |
| 退所後に移行先施設(保育所等)を訪問して助言・援助を行った場合 | 500 単位 / 回(1 回を限度) |
改定前は「退所後の居宅訪問(1回限度)」のみでしたが、改定後は丁寧な移行ステップを踏むことで、1人の児童につき最大4回(計2,000単位=約2万円分)の算定が可能となっています。
加算算定のための具体的な必須要件
本加算を取得・維持するためには、以下の公的基準を満たす必要があります。
- 通所支援計画への位置づけ:児童や家族の意向・課題を事前にしっかりと把握し、あらかじめ保護者の同意を得た上で、個別支援計画(通所支援計画)に移行支援の目標や内容を具体的に位置づけておくこと。
- 実績の記録:移行支援を行った日付、具体的な支援内容の要点(移行先との協議内容や助言した環境調整の工夫など)を、日々の記録として適切に保管しておくこと。
- 退所後支援の期限:退所後の訪問による相談や助言(上記区分2・3)については、退所後30日以内に実施することが必須要件となります。
実務で最も注意すべき「算定できないケース」
SEOの検索需要が高く、現場で最もミスが起きやすいのが「児童の移行先(進路)による制限」です。本加算は「地域の集団生活(保育所等)へのインクルージョン」を評価する趣旨であるため、退所後の進路が以下のいずれかに該当する場合は、いくら手厚い引継ぎを行っても加算を一切算定できません。
- 別の障害児通所支援事業所への転所(ハシゴ利用)
- 病院や診療所への入院
- 他の社会福祉施設等(児童養護施設や入所施設など)への入所
- 学校教育法第1条に規定する学校への入学(※小学校、中学校、特別支援学校など。ただし幼稚園は除く)
- 死亡退所の場合
✓注意ポイント 児童発達支援から「小学校」へ入学する場合や、放課後等デイサービスから「中学校・高校」へ進学する場合は、通常の教育課程への移行とみなされるため本加算の対象外となります。(※これらの学校連携については、別途「関係機関連携加算」等での評価となります) 算定対象となるのは、主に「保育所、幼稚園、認定こども園、放課後児童クラブ(学童保育)」などへの完全移行時です。
公的Q&A(こども家庭庁発表)に基づくよくある質問
Q1:退所後に移行先を訪問して支援を行う場合、すでに事業所を退所(利用終了)して受給者証の有効期間が切れていたらどのように請求すればよいですか?
A1:利用終了月と支給決定期間の終期が同一である場合は、利用終了から起算して6ヶ月の範囲内で支援が完了した後に、終期月分として改めて請求することができます。
こども家庭庁の公式Q&A(令和6年3月29日発出 VOL.1 問38)において、以下のように取扱いが示されています。
- 支給決定期間とサービスの利用終了月が同一の場合、サービス利用終了から起算して6月の範囲内で支援が終了した後に、支給決定期間の終期月分として改めて請求すること。
- 支給決定の有効期間内にサービスを受ける必要がなくなった(有効期間の途中で前倒しで利用を終了した)場合は、その有効期間内の支援として通常通り請求すること。
Q2:一度退所して保育所等へ移行した児童が、やむを得ない事情で再度同じ事業所に通所することになりました。その後、再び移行支援を行って退所する場合、もう一度この加算を算定できますか?
A2:いいえ、算定できません。同一の事業所において、同一の児童に対しては「1回(1度に限り)」の評価となります。
こども家庭庁の公式Q&A(令和6年5月17日発出 問39)において、以下の通り明確に示されています。
「保育・教育等移行加算については、同一の事業所において、同一の障害児に対して1度に限り算定できるものであり、何度も算定することはできない。」 どれほどやむを得ない事情(再通所)があったとしても、過去に一度でもその児童に対して同加算を算定した実績がある場合は、同一事業所での再算定は認められません。
Q3:退所前の会議や調整にあたり、「関係機関連携加算」や「保育所等訪問支援」の報酬と同時に算定することは可能ですか?
A3:いいえ、同一の行為について他の報酬や加算で評価されている場合は、本加算を重ねて算定することはできません。
自治体の留意事項等において、「関係機関連携加算や保育所等訪問支援などで評価した行為については、本加算は算定されない」と明記されています。同じ日に同じ目的で連携を行った場合は、どの加算の要件として請求するかを明確に区分し、重複請求(過誤)にならないよう実務上注意する必要があります。
まとめ:円滑な地域移行と事業所の健全な経営を両立するために
保育・教育等移行支援加算の見直しは、事業所が時間をかけて丁寧に行ってきた「移行期の引継ぎ・環境調整」という目に見えにくい努力を、公的に正当評価する素晴らしい改定です。
1人あたり最大2,000単位(約2万円)の上乗せは、引継ぎ書類の作成や移行先への訪問にかかるスタッフの人件費・移動コストを適切に補填し、事業所のインクルージョン推進の姿勢を地域にアピールする上でも大きな強みとなります。しかし、小学校入学が対象外である点や、同一児童への再算定不可ルール、他連携加算との重複制限など、公的基準を厳格に守らなければ、のちの運営指導で返還リスクを負うことになります。
一次情報のルールを正しく理解し、漏れのない適正な事業所運営を進めていきましょう。
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