児童発達支援や放課後等デイサービスの運営において、視覚障害や聴覚障害、言語機能障害を持つ子どもたちに対して、適切なコミュニケーション環境を整えることは非常に重要です。しかし、手話や点字、専門的な意思疎通の支援には高い専門性と人員体制が求められます。
こうしたニーズに応えるため、2024年度(令和6年度)の障害福祉サービス等報酬改定において、新たに「視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算」が創設されました。本コラムでは、こども家庭庁の公的資料に基づき、加算の単位数から対象児童の判定基準、配置すべき専門人材の要件、実務上の注意点までを丁寧に解説します。
視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算の概要と対象業種
本加算は、視覚や聴覚、あるいは言語機能に重度の障害がある児童に対して、意思疎通(コミュニケーション)に関する専門性を有する人材を配置し、適切なコミュニケーション支援を行いながら発達支援・放課後等デイサービスを提供した場合に評価される報酬です。
対象となる業種
- 児童発達支援 (センター型含む)
- 放課後等デイサービス
これまで大人の障害福祉サービス(生活介護など)には同様の体制加算がありましたが、今回の改定により障害児通通所支援(児童福祉分野)でも正式に評価される仕組みが整いました。
視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算の単位数
本加算の単位数は、児童発達支援・放課後等デイサービスのいずれにおいても一律で設定されています。
単位数 : 100単位 / 日
対象となる児童が来所し、時間帯を通じて専門人材による意思疎通支援(コミュニケーションサポート)を伴う療育を行った日ごとに、1日あたり100単位を基本報酬に上乗せして算定することができます。
加算算定のための3つの必須要件
視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算を取得するためには、公的基準に定められた以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
1.対象児童の要件(重度の障害) :原則として身体障害者手帳の交付を受けており、定められた障害等級に該当する児童であること。
2.専門人材の配置要件 :支援を行う時間帯を通じて、児童との意思疎通に関して専門性を有する人材を配置していること。
3.計画への記載と同意・記録 :個別支援計画に専門的なコミュニケーション支援の内容を明記し、保護者から事前に同意を得て、日々のサービス提供記録に支援内容を記録していること。
※また受給者証に重度の障がい児である旨の記載がないと、この加算は算定することができません。
現場で重要な「対象児童」と「専門人材」の具体例
SEOで最も検索されやすく、実務でも判断が分かれやすい「児童の等級基準」と「専門職員の資格」について詳しく解説します。
対象となる「重度の障がい児」の基準
対象となるのは、以下のいずれかの基準を満たす児童です。なお、手帳の「総合等級」ではなく、「該当する障害の個別等級」で判断する点に注意してください。
- 視覚障害 :身体障害者手帳 1級 または 2級の身体障害者手帳の交付を受けている児童 (日常生活でのコミュニケーションや移動に著しい支障がある状態)
- 聴覚障害 :身体障害者手帳 2級の身体障害者手帳の交付を受けている児童 (日常生活におけるコミュニケーションに著しい支障がある状態)
- 音声機能・言語機能・咀嚼(そしゃく)機能障害 :身体障害者手帳 3級の身体障害者手帳の交付を受けている児童
「意思疎通に関して専門性を有する人材」の該当資格・職種
支援を行う時間帯を通じて配置すべき人材(職員)は、以下の資格や専門性を有している必要があります。
- 手話通訳士、手話通訳者
- 要約筆記奉仕員、点訳奉仕員、朗読奉仕員
- 言語聴覚士(ST)
- 精神保健福祉士
- 視覚障害者移動支援従事者(同行援護従事者など)
- 自身が聴覚障害当事者などである「障害当事者職員」
※その他、上記に準ずる者として、自治体により視覚・聴覚・言語機能の意思疎通支援に関し、同等以上の専門性を有すると認められる者
特に聴覚障害を支援する事業所においては、手話などで高い意思疎通が図れる「聴覚障害のある当事者職員」の配置も、安心感を支える専門人材として正当に評価されます。
視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算に関するよくある質問(Q&A)
Q1:放課後等デイサービスでも、この加算は算定できますか?
A1:はい、算定可能です。
本加算は2024年度の報酬改定において、児童発達支援と放課後等デイサービスの両方に同時に新設された加算です。要件を満たせば、どちらのサービスでも 1日100単位 を上乗せ算定できます。
Q2:配置する専門職員は「常勤」でなければいけないのですか?
A2:いいえ、非常勤(パート)の職員や、有資格の直接支援職員でも構いません。
重要なのは「対象となる児童への支援を行う時間帯を通じて、その専門人材が配置されていること」です。常勤・非常勤の雇用形態は問われませんが、該当する時間帯の勤務実績表(シフト表)で専門人材の配置を明確に証明できるように書類を整えておく必要があります。
Q3:2024年度に新設された「人工内耳装用児支援加算」と同時に算定することはできますか?
A3:はい、両方の要件を満たしていれば同時に算定(併算定)することが可能です。
こども家庭庁が発表している公式のQ&A(令和6年3月29日発表・VOL.1)において、「例えば、人工内耳を装用し、身体障害者手帳2級以上に該当する児童の場合、要件を満たしていれば『人工内耳装用児支援加算』と『視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算』を同時に算定することが可能である」と明記されています。
Q4:対象となる児童が利用した日は、毎日算定しても良いですか?
A4:個別支援計画に基づき、実際に専門人材がコミュニケーション支援を行いながら療育を提供した日であれば、来所ごとに毎日算定可能です。
現時点で月当たりの算定回数に制限はありません。ただし、対象児が通所していても、専門人材が不在の時間帯であったり、具体的なコミュニケーション配慮が実施されず日々の記録(サービス提供記録)にもその旨が残っていない場合は、算定対象外(運営指導での返還対象)となりますので十分注意してください。
まとめ:質の高い意思疎通支援と健全な事業所運営の両立
視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算の新設は、これまで現場の努力や個別の工夫に頼りがちだった「重度障害児への意思疎通サポート」に対して、公的な報酬として正当な評価が下されるようになった画期的な変化です。
対象となる児童1人・1日あたり100単位(約1,000円)の上乗せは、専門職員(言語聴覚士や手話通訳者など)の採用・配置コストを補填し、事業所の経営を安定させるためにも非常に大きな役割を果たします。しかし、身体障害者手帳の個別等級の厳格な確認や、支援時間帯を通じた配置の証明、他加算(専門的支援加算など)との重複制限ルールの確認など、実務上の法令順守(コンプライアンス)管理を怠ると、運営指導での返還リスクにつながります。
公式の一次情報を正しく理解し、計画的に加算取得の手続きを進めていきましょう。
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