訪問介護におけるスタッフの採用難や、安定した運営基盤の構築にお悩みの経営者様へ
今回は、東京都三鷹市で 24 時間対応の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下、定期巡回)」に参入された、株式会社いるてとの代表取締役 前川様にお話を伺いました 。
「24 時間対応は人が集まらない」「認知度が低く集客が難しい」といった業界のイメージを覆し、地域になくてはならないインフラとして安定した事業基盤を築き上げたリアルな軌跡を、船井総合研究所の介護経営コンサルタントが紐解きます。
企業紹介:株式会社いるてと
東京都三鷹市に拠点を置く在宅介護事業者。「いる(共にいる)」「てる(輝る、今を照らす)」「とわ(永遠に未来につづく)」を社名の由来とする。定期巡回サービスを中心に、退院直後や医療ニーズのある重度者を積極的に受け入れ、地域福祉を支える重要な拠点として機能している。
Q1. 24 時間体制の定期巡回は「過酷だ」というイメージを持たれがちで、採用を不安視する経営者様も多いです。開設時の採用状況はいかがでしたか?
前川さま: 実は、開設時の募集では想定以上の反響がありました 。当初は 2 名採用できればと考えていたのですが、結果的に倍の 4 名を採用することができました。
人が集まった理由は、このサービスならではの「スタッフの裁量の大きさ」にあると考えています。
決められた時間に決められた作業だけをするのではなく、現場の状況に合わせて「今は食欲がないようだから、食事介助は後にしよう」といった柔軟な対応が可能です。「時間に縛られず、目の前の方にしっかり寄り添うケアがしたい」と願う経験者層にとって、この自由度の高さが非常に魅力的に映ったのだと思います。
Q2. 開設当初は定期巡回の認知度が低く、利用者様の獲得に苦労されたと伺いました。どのようにして依頼を増やしていったのでしょうか?
前川さま: 私たちが事業を始めた頃、三鷹市には定期巡回の事業所が他に 1 箇所しかなく、地域のケアマネジャーすらサービス内容をよく知らない状態でした 。最初の 1 ヶ月は利用者様がゼロで、本当に胃が痛くなる思いでした。
そこで、ケアマネジャーの「困りごと」を解決する提案に切り替えました 。1 日に何度も訪問が必要なケースでも「スケジュール調整はこちらで丸ごと引き受けます」とお伝えしてプラン作成の手間を減らす提案や、「退院直後の不安定な時期だけでも活用してみてください」といった提案を地道に続けました 。そうして困難なケースに真摯に向き合ううちに、「あそこに頼めば安心だ」という信頼が口コミで広がっていきました。
Q3. 経営面についても伺います。事業を継続するための安定した基盤が整ったのは、開設からどのくらいの時期でしたか?
前川さま: 開設から 10 ヶ月ほどで、運営の土台を固めるための手応えを感じられるようになってきました。現在は、事業の継続性を損なわない健全な運営を維持するためのバランスを意識しながらスタッフの環境改善の優先順位を見極め、人事制度の構築と並行して ICT 活用などの投資を実行できるようになりました。非常勤の方は家庭の事情等で入れ替わりもありますが、正社員の定着率は非常に安定しています。
Q4. 「地域に必要とされるサービス」として、安定した運営を継続できているポイントはどこにあるとお考えですか?
前川さま: 当社が大切にしているのは、ご自宅での生活が難しく、手厚いサポートを本当に必要としている方をしっかりとお支えすることです。
退院直後で状態が不安定な方や、重度の方からのご相談を断らずに向き合ってきた結果、当社の利用者様の平均要介護度は 3.6 となっています。定期巡回は包括報酬であるため、必要なケアを必要なだけ提供できる仕組みが、重度の方の在宅生活を支え続けるという私たちの姿勢と非常に親和性が高いと感じております。
Q5. 最後に、定期巡回サービスへの転換や参入を検討している法人様へ、メッセージをお願いします。
前川さま: 事業である以上、健全な運営を維持することは不可欠ですが、効率化ばかりを追求すると利用者様の満足度は下がってしまいます。かといって無理を重ねすぎると事業を継続できないため、このバランス感覚が非常に重要です。
以前、利用者様が「夕方にラーメンが食べたい」とおっしゃった際、定期巡回であれば「じゃあ麺が伸びないように訪問時間をずらしましょう」と柔軟に調整ができました。スタッフが自律的に動いて楽しみながら働き、利用者様のふとした願いにも応えられる。そんな地域の社会資源として、定期巡回という素晴らしいサービスが適正に広がっていくことを願っています。







