皆さま、こんにちは。船井総合研究所の菅野です。
日々の介護事業経営、本当にお疲れ様です。せっかく採用した職員が早期に退職してしまうのは、採用費も時間も労力も無駄になり、経営者としては本当に頭の痛い問題ですよね。
人が足りずに現場が回らないというのは、介護業界における「あるある」かつ極めて深刻な課題です。
私は日々、経営コンサルタントとして多くの介護事業者様と向き合っていますが、黒字経営を目指す経営者様の苦悩も、現場で働く職員さんたちの歯がゆい思いも痛いほど分かります。
今回は「介護の労働実態調査」のデータを紐解きながら、経営層が陥りがちなマネジメントの罠と、今日から実践できる本質的な「介護職の離職対策」について、私のコンサルティング経験を交えながらお話ししていきたいと思います。
▼本コラムの内容は下記動画からもご覧いただけます
- データから読み解く、介護職が退職する「本当の理由」と現場のホンネ
- 良かれと思ってやってしまう、経営層の「離職を招くNGアクション」
- 上司のマネジメント力を自然に引き上げる2つの具体的な仕組み
- 一般職員が「ズルをせず」自らやりがいを見出せる評価と承認の仕組み
- 管理者が自走し、経営力アップに直結する「幹部会議」の作り方
介護業界の離職理由トップ3
毎年出ている「介護の労働実態調査」のデータを読み解くと、答えは非常に明確です。
第1位は全体の37.9%を占める「人間関係」。そして第2位が25.6%で「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」となっています。
ちなみに第3位は「他に良い職場・仕事があったから」ですが、注目すべきはこの1位と2位です。これを合わせるとなんと63.5%。
つまり、退職理由の半分以上がここにあるわけです。
逆に言えば、このトップ2の正体を正しく捉え、適切な対策を打つことができれば、今より退職する職員を半分に減らすことも可能だということです。
▼介護業界の離職理由トップ3の内容と内訳

ここが非常に耳の痛いお話になるのですが、事実として受け止めていただく必要があります。
まず、1位の「人間関係」ですが、同僚でも部下でもありません。
追加のアンケート結果を見ると「上司の管理能力が低い、リーダーシップがなく信用できなかった」「上司の思いやりのない言動、きつい指導」がトップにきています。つまり、人間関係のトラブルの相手は、約50%の確率で「上司(管理者)」なのです。
さらに、2位の「運営への不満」を掘り下げると、「無駄な業務が多く、業務負担への配慮が弱い」「経営の効率性やリスクを過度に重視し、介護の質の向上に取り組めなかった」という声が噴出しています。
これを一言でまとめると、現場のホンネは「経営のことばかり言わないで欲しい、聞きたくない」という強い反発なのです。
経営層が陥りがちな罠と「言わない」マネジメント
私も経営コンサルタントですから、赤字では経営が成り立たないことは痛いほど分かります。ボランティアでは事業は継続できません。
しかし、事実として「一般の職員に経営の数字を語ること」は最大の離職要因になります。
経営層が「稼働率を上げろ」「空室を埋めろ」と理解を求めれば求めるほど、現場は「介護ってそういうことじゃない。利用者が少なくて職員が多い方が手厚いケアができるのに、なぜ増やせと言われるんだ」と猛反発します。
そして最終的に「うちの会社は儲け主義だ」とレッテルを貼られ、退職に繋がっていくのです。
結論として、一般職に対しては経営の数字は「言わない」のが正解です。経営へのコミットを求めるのは、経営の鍵を握っている「幹部・経営陣」のみに留めてください。ここを履き違えて全職員に数字を押し付けると、組織は崩壊に向かいます。
介護職の離職対策:定着する職場を作る「3つの仕組み」
個人の力量に頼って「力をつけてからマネジメントさせる」のは時間がかかりすぎます。重要なのは、「マネジメント力が自然と育つ仕組み・環境」を事業所内に整えることです。
即効性がある具体的な対策は2つ。「定期的な面談(1on1)」と「月1の事業所会議」です。
1on1は、上司が職員1人ひとりのホンネと向き合う個別対応の仕組みです。「こんなこと言われたら嫌だな」と逃げたくなる気持ちも分かりますが、半年に1回でもいいので、まずは逃げずにやってみてください。実践する中で必ず上司の経験値が上がり、スキルが備わっていきます。
介護業界における最大の「あるある間違い」が、事業所会議を「カンファレンス」にしてしまっていることです。
「誕生日会をどうする?」「あの利用者さんのケアプランは?」
といった利用者さんの話をするのはカンファレンスです。私が提案する「職員の定着に繋がる事業所会議」とは、事業の運営や職員の困り事、職場の改善策を話し合う場のことです。
声の大きいベテランの意見だけで事業が進むような環境は、良い職場とは言えません。社長や幹部からの戦略を現場に落とし込み、全員が意見を出し合って事業を前に進める。
カンファレンスとは完全に切り離した「事業所会議」を仕組みとして導入することが、風通しの良い職場作りの絶対条件です。
やりがいを自然発生に任せていると、「仕事をサボった者勝ち」「真面目な人が損をする」という小ズルい働き方が蔓延します。経営側から「やりがいを作る仕組み」を意図的に仕掛けることが不可欠です。
具体的には、1on1を通じて「その人が目指す成長」を把握し、それと連動した評価制度を運用すること。
そして、利用者様からの感謝の手紙や、同僚からの「ありがとう、助かったよ」というポジティブな声を、管理者が意図的に事業所全体へ拡散させることです。
自分の意見が現場に反映されたという「成功体験」や、理念に向かって利用者の笑顔を作っているという「実感」が持てるよう、方針発表会や表彰制度を取り入れるのも非常に有効です。
評価制度に関する成功事例を詳しくまとめた無料レポートもございますので、そちらも是非ご覧ください。
幹部の経営力を上げる秘訣は非常にシンプルです。稼働率の低下、職員同士の揉め事など、現場で起きているあらゆる問題を「幹部自身に解決させる仕組み」を作ることです。
船井総研でよく導入支援を行っているのが、自走式の「幹部会議作り」です。売上や人件費、営業日数、平均要介護度などのKPIを幹部自身に分析させ、次の1ヶ月の「戦略(作戦)」を作文させます。
経営分析をして資料を作り、会議で発表し、前回の行動(P)が実行できたかを確認(C)し、他の管理者からの質疑応答を経て、新たな宿題(A)を持ち帰る。
この当たり前のPDCAサイクルを回す会議体を構築するのです。これを数ヶ月続けるだけで、幹部は驚くほど経営力を身につけ、立派な管理者へと育っていきます。
▼実際の会議資料の例

介護職員の離職にお悩みの方へ
介護職の離職対策は、「人間関係の改善」や「やりがい搾取」といった精神論だけでは解決しません。
データに基づき、評価制度や会議体といった「定着するための仕組み」をロジカルに構築することが、経営者にとっての最大の防御策であり攻めの一手となります。
とはいえ、「自社のどこにボトルネックがあるのか分からない」「今の会議をどう変えればいいのか見当もつかない」と悩まれる経営者様も多いはずです。
今回お話しした内容について、もう少し自社に引き寄せた具体的な解決策を知りたいという方は、ぜひ一度、船井総合研究所の無料経営相談をご活用ください。
現状の課題をざっくばらんにお聞かせいただくだけでも、解決の糸口が必ず見えてくるはずです。
大切な職員が辞めてしまう前に、まずは専門家との壁打ちから始めてみませんか?
お気軽なお問い合わせをお待ちしております。









