「ナーシングホームの次」のトレンド4つ

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執筆者津田 和知
コラムテーマナーシングホーム・ホスピス
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近年、有料老人ホーム経営において「ナーシングホーム」は大きなトレンドでした。新設される施設の1割以上を占めるとも言われたこのモデルは、がん末期や難病の方をターゲットとし、医療保険の仕組みを活用することで急速に拡大しました。

しかし、その急速な拡大期は今、一つの転換点を迎えています。2026年の診療報酬改定をはじめとする直近の一連の制度見直しは、訪問看護の出来高に依存した事業モデルに対する、国からの明確な方針転換のメッセージでした。
一方で、社会保障費がひっ迫する中、国や行政の眼差しは、出来高制の住宅型から、包括報酬(定額制)である「特定施設入居者生活介護(介護付き)」への移行・転換へと明確に向かっています。
また、特養の建設費が高騰し、新設の辞退が相次ぐ今、在宅では支えきれない重度者や認知症高齢者を受け入れる「施設の重要性」はかつてなく高まっています。

「ナーシングホームモデル」の展開が難しくなる中、私たちはどのような戦略で次代の施設経営を描くべきなのでしょうか。
本コラムでは、環境変化を踏まえた「ナーシングホームの次」の経営トレンドを4つの視点から紐解いていきます。

「ナーシングホームの次」のトレンド4つ

特養の代替としての「特定施設(介護付き)」への回帰と転換

現在、建築資材と人件費の高騰により、社会福祉法人が特養の新設を辞退するケースが全国で発生しています。しかし、行政は2040年に向けて重度者の受け皿を確保しなければなりません。そこで今後進むと予測されるのが、特養の整備枠を民間活力が期待できる特定施設へ振り替える動きや、既存の住宅型から特定施設への転換枠の拡大です。

これは事業者にとっても合理的な選択です。出来高制の住宅型では、サービス提供量が増えれば売上が上がる反面、過剰サービスとの批判を招きがちでした。しかし、定額制である特定施設へ移行すれば、「入居者の状態を安定させ、突発的なトラブル(転倒や状態悪化)を防ぐほど、現場の負担が減り利益率が向上する」という、本来のケアのあり方と経営のベクトルが一致する健全な構造へと回帰します。

ターゲットの拡張:がん末期から「重度認知症×医療依存」へ

これまで多くのナーシングホームは、単価が高く指示書が出やすい「がん末期」や「神経難病」をメインターゲットとしてきました。しかし、今後の超高齢社会において在宅生活が最も困難になり、社会的な受け皿が急務となるのは「医療的ケアが必要でありながら、重度の認知症(BPSD等)を伴う高齢者」です。

身体的な医療ケアだけでなく、認知症ケアの専門性を掛け合わせた24時間体制の施設こそが、地域の病院やケアマネジャーから最も必要とされます。ターゲットを「制度上単価が高い層」から「社会的に最も必要とされている層」へ拡張することが、長期的な高稼働を維持する鍵となります。

Tech-Drivenによるオペレーションの最適化

定額制(包括報酬)の枠組みの中で利益を確保し、かつスタッフの負担を軽減するためには、テクノロジーの活用が不可欠です。これからの施設運営は、「人を集めてサービスを算定する」ことから、「いかにスリムな体制で高品質なケアを提供するか」へシフトします。

見守りセンサー、インカム、生体情報モニタリング、AIによる状態予測、そして介護記録ソフトを完全に連動させたテクノロジー前提のオペレーションが標準化します。これにより夜間の巡回業務や記録業務を極限まで削減し、テクノロジーによる人員配置基準の緩和要件をフル活用することで、人件費を最適化しつつ安全性を高めることが求められます。

新築開発から既存施設の転換・M&Aへ

特養の辞退要因にもなっている通り、老人ホームの建築費はこの10年で約1.5倍に高騰しており、新築での事業計画は投資回収のハードルが極めて高くなっています。

そのため、次の成長戦略は新築ではなく、稼働率が低迷している既存施設(一般型の住宅型など)のM&Aとコンバージョン(用途転換)が主流となります。ハコモノへの初期投資を抑えつつ、前述した医療・重度認知症対応やテクノロジー導入によって施設の付加価値を再定義し、客単価と稼働率を最大化するアプローチです。既存ストックの有効活用こそが、これからの施設展開の最適解と言えます。

「モデルを真似れば儲かる」時代から本質的な経営力が問われる時代に

これまでの有料老人ホーム経営は、制度の枠組みの中でいかに収益を最大化するかという視点が先行しがちでした。しかし、社会保障費の限界と圧倒的な人手不足を背景に、これからの時代に求められるのは、定額制の中でテクノロジーを駆使し、社会から真に必要とされる「重度認知症×医療依存」の受け皿を持続可能な形で提供する「本質的な経営力とオペレーション力」です。

弊社では、こうした大きな転換期において次の一手を見据える経営者様向けに、「有料老人ホームの経営相談・戦略構築サポート」を実施しております。

・特定施設(介護付き)への転換戦略: 自治体の動向予測と、枠獲得・転換に向けた行政交渉のアドバイス
・オペレーションのスリム化: 利益を生み出す「Tech-Driven」な体制作りと、人員配置最適化のロードマップ策定
・M&A・コンバージョン支援: 既存施設の取得から、医療・重度認知症対応型へのリニューアル計画の立案
・収益改善プログラム: 現状の住宅型モデルにおける、適正かつ持続可能な収益構造への見直し

制度改定に左右されない強靭な施設づくりへ、今こそ舵を切るタイミングです。「今後の事業展開に迷いがある」「既存施設の立て直しを図りたい」「M&Aを含めた新たな展開を模索している」といった経営者・事業責任者の皆様は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。貴社の現状に即した、最適な解決策をご提案いたします。

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執筆者 : 津田 和知

大手介護事業者の介護付き有料老人ホーム施設長を経て、船井総合研究所に入社。前職の経験を活かし、現場主義で問題の本質や改善の糸口を掴み、経営者のサポートを行う。 コンサルティング領域は、介護事業全般の経営改善や訪問看護ステーションの立ち上げ、人事制度構築、厚生労働省調査研究事業への参画など。