現在2026年4月。来年の「2027年介護報酬改定および介護保険法改正」に向けた議論が、社会保障審議会などでいよいよ最終コーナーに差し掛かっています。 経営者の皆様に一つの視点としてお伝えしたいのは、2024年の前回改定が「2027年の抜本的見直しに向けた布石」であった可能性です。前回先送りされた痛みを伴う議論が、いよいよ実行フェーズに移るのではないかと予測しています。
2027年は、介護保険制度の「法改正(ルールの変更)」と「報酬改定(価格の変更)」が同時に行われる大きな節目です。さらに、労働基準法改正による「勤務間インターバル」等の規制見直しや、技能実習に代わる「育成就労制度」の本格化など、労務と人材確保における環境変化も重なります。
本コラムでは、介護経営における専門的な視点から、2027年に想定される「3つの具体的な予測」と、今から検討すべき対策の方向性を提言します。
予測①:「要介護1・2の総合事業移行」は形を変えた実質的な見直しへ
最大の焦点である「要介護1・2の訪問介護・通所介護の総合事業(市町村)への完全移行」についてですが、2027年における全国一律の強制移行は「見送り」となる公算が大きいと考えています。各市町村の受け皿としての体制整備が十分に追いついていないという現実があるためです。
しかし、給付費抑制という国全体の大きな方向性が変わるわけではありません。完全移行が見送られたとしても、その代わりに軽度者向けサービスの基本報酬(単価)の引き下げや、生活援助を中心とした算定要件の厳格化など、実質的な引き締めが行われる可能性が高いとみています。特養の多床室の室料負担化や、ケアマネジメントの自己負担導入も、この文脈の中で議論が進むと予測されます。要介護1・2の利用者をメインとしている事業所は、サービス提供のあり方を見直す時期に来ているのかもしれません。
予測②:介護DXは「加算」での評価から「標準仕様」のフェーズへ
加算を最大限に活用するためには、厚生労働省が定める要件を「事務作業」としてではなく、「組織強化のチャンス」として捉え直す必要があります。
2.1 職員の「成長」を支える(キャリアパス要件)
人手不足の限界点を超えるため、テクノロジー導入と人員配置基準の弾力化はセットで議論が進んでいます。
これまでICT機器や見守りセンサーの導入は、先行者利益としての「加算」や「補助金」の対象として評価されてきました。しかし2027年以降は、徐々にこれが「標準仕様」へと切り替わっていくと考えられます。すなわち、LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出やICT化が進んでいない事業所は、生産性向上の取り組みが不十分とみなされ、基本報酬の算定において不利になる(実質的な減算措置が取られる)リスクも視野に入れておく必要があります。テクノロジーの活用は、特別な法人の取り組みから、全事業所に共通する経営課題へと変化しています。
予測③:外国人材の「転籍解禁」による流動化への対応
2027年までに本格化する「育成就労制度」は、これまでの外国人材戦略を見直す大きな契機となります。経営上の最も注視すべき変更点は「転籍(転職)の解禁」です。
一定の条件のもとで転籍が認められるようになれば、外国人材も日本人スタッフと同様に、より待遇が良く、働きやすい環境(例えばDX化が進み業務負担が少ない、評価・教育制度が整っているなど)を自ら選ぶようになります。これまでのように「一度採用すれば数年は定着してくれる」という前提は崩れ、国籍を問わず「選ばれる法人」にならなければ、人材確保が難しい競争市場へと変化していくと予測されます。
次代を見据えた経営の条件とは
これら「給付の適正化」「DXの標準化」「人材獲得の競争激化」という3つの波に対し、経営者が検討すべき方向性は以下の3点に集約されると考えています。
- 専門性の再定義
- 軽度者中心のモデルから、中重度者の受け入れや看取り対応など、単価が担保されやすい専門性の高い領域へのシフトを検討する。
- 投資としてのDX推進
- 人員配置の最適化を前提としたシステムや機器の導入を、可能な範囲で計画的に進める。
- 地域内での連携・協働
- 単独での課題解決が難しい場合、地域の他法人との共同購買や間接部門のシェアリング、あるいは前向きな事業統合(M&A)なども選択肢に含める。
2027年の制度変更は、単なるマイナーチェンジではなく、経営のあり方そのものを問うものになるでしょう。本コラムが、来るべき変化にしなやかに適応し、持続可能な事業運営を構築するための議論の一助となれば幸いです。







