人口 1.4 万人の町で「在宅の限界」を支える社会インフラへ。 黒字化を実現した定期巡回・随時対応型訪問介護看護の運営実態とは 社会福祉法人 富士見町社会福祉協議会 小林 様・小池 様

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長野県諏訪郡富士見町。人口約 1 万 4000 人のこの町で、地域唯一の定期巡回サービスを
展開するのが富士見町社会福祉協議会です。開設当初は利用者の確保に苦戦しつつも、現在は月商 500 万円を超え、営業利益率 8.5%を確保する安定経営を実現しています。「社協がやらなければ、地域でやる事業所がない」という使命感からスタートし、いかにして地域の「社会インフラ」として定着させたのか。その軌跡と運営のポイントを、事務局長の小林功様と所長の小池真由美様に伺いました。

企業紹介


法人名: 社会福祉法人富士見町社会福祉協議会
事業所名: 24 時間ケアサポートふじみ
所在地: 長野県諏訪郡富士見町
開設: 平成 29 年(2017 年)3 月
事業形態: 連携型(訪問看護は地域の総合病院と連携)
特徴: 人口減少が進む中山間地域において、小規模多機能型居宅介護と併設する形で事務所を構え、地域の在宅生活を 24 時間体制で支えている。正規職員比率を高め、質の高いケアを提供することで重度者の在宅生活を可能にしている。

Q&A 形式

Q1. まず初めに、定期巡回サービスへ参入された背景と理由について教えていただけます
でしょうか。
小林様: 一番の理由は、人口 1 万 4000 人の小さな町において、1万 4000 人の小さな町
において、24 時間 365 日支える介護サービスが不足していたほか、県境の中山間地域では民間事業者の参入が困難であり、「社協がやらなければ」という危機感がありました。

また、職員とこれからの地域のあり方を議論する中で、「看取りを含めて、最期まで住み慣れた自宅で暮らすためにはどうすればよいか」を考えた際、やはり従来の訪問介護だけでは限界があり、巡回型サービスの必要性が強く認識されたため、参入を決意しました。


Q2. 従来の訪問介護とは異なるサービスですが、開設当初に直面した課題や、現場職員の意識改革についてはいかがでしたか。
小池様:現場として一番の課題は、やはり職員の意識の切り替えでした。定期巡回は「短時間・頻回訪問」が基本となりますが、従来の訪問介護のように一定時間をかけてサポートするスタイルに慣れていると、最初は戸惑いが生じます。

しかし、当法人の定期巡回は地域で唯一の事業所であるため、限られた人員でより多くの方の在宅生活を支える仕組みを作る必要がありました。 また、私たちが目指すのは「利用者の自立」です。

例えば「食事のセッティングだけして一度退出」し、利用者が自分で食べている間に別の訪問へ行き、後で「下膳と服薬確認」に戻る。こうして隙間時間をご自身で動いていただくことが、結果的に自立支援にもつながります。こうした考え方を現場に浸透させることに注力しました。


Q3. 「連携型」を選択された理由と、現在の経営の状況についてお聞かせください。
小林様: 私たちは医療面を地元の総合病院の訪問看護ステーションにお任せする「連携型」をとっています。我々は福祉の専門家ですので、「医療は病院、介護は社協」という役割分担を明確にし、お互いの強みを活かしています。

経営面では、直近(令和 6 年 9 月以降)は利用者数が 40 名を超えて定着しています。在宅での看取りなど、重度の方や医療ニーズの高い方からのご依頼が増え、平均要介護度も 2.5 まで上昇しました。 質の高いケアを安定して提供するため、正規職員を中心とした体制をとっており人件費率は約 79%と高めですが、経営数値としては営業利益率 8.5%と安定した運営ができています。もちろん単年度ごとに波はありますが、地域の方々が最期までご自宅で暮らせる体制を維持し続けるため、今後も安定した事業継続に努めていきたいと考えています。


Q4. 最後に、今後の展望と、地域における定期巡回の役割についてお聞かせください。
小林様:現場としての切実な願いは、「地域と協力し合える、プラスアルファの定期巡回」でありたいということです。定期巡回という 24 時間のサービスが入ると、ご本人やご家族は安心します。しかし、それと同時に、それまでその方を見守ってくれていた近隣住民や民生委員の方々が、「もうプロが入ったから安心だ」と感じて、関わりから手を引いてしまうことがあるのです。これが「入って安心」の落とし穴だと感じています。私たちが目指しているのは、プロが入ることで地域の方々が離れてしまうことではありません。 「定期巡回が入ったから終わり」ではなく、私たち専門職と、これまで支えてきた地域の方々が「一緒に協力し合う」ことで、その方をより手厚く支える。そんな「制度+地域」の「プラスアルファ」の支援ができる仕組みを作っていきたいと考えています