訪問介護におけるスタッフの採用難や、安定した収益基盤の構築にお悩みの経営者様へ。
今回は、東京都三鷹市で 24 時間対応の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下、定期巡回)」に参入し、開設から約 7 ヶ月で単月黒字化を達成した株式会社いるてとの代表取締役前川様にお話を伺いました。「24 時間対応は人が集まらない」「認知度が低く集客が難しい」といった業界のイメージを覆し、安定した事業基盤を築き上げたリアルな軌跡と成功の秘訣について、船井総合研究所の介護経営コンサルタントが迫ります。
企業紹介
株式会社いるてと
東京都三鷹市に拠点を置く在宅介護事業者。「いる(共にいる)」「てる(輝る、今を照らす)」「とわ(永遠に未来につづく)」を社名の由来とする。定期巡回サービスを中心に展開。退院直後や医療ニーズのある重度者を積極的に受け入れることで、利用者 1 人当たりの単価約 20万 5,000 円を実現し、地域になくてはならないインフラとして機能している。
Q1. 24 時間体制の定期巡回は「過酷だ」というイメージを持たれがちで、採用を不安視する経営者様も多いです。開設時の採用状況はいかがでしたか?
前川さま: 実は、開設時の募集では想定以上の反響がありました。当初は 2 名採用できればと考えていたのですが、結果的に倍の 4 名を採用することができ、むしろ最初は人件費の負担を心配したほどです。 人が集まった理由は、このサービスならではの「スタッフの裁量の大きさ」にあると考えています。決められた時間に決められた作業だけをするのではなく、「今はお腹が空いていないから、食事は後にしよう」といった現場の状況に合わせた柔軟な対応が可能です。「時間に縛られず、目の前の方にしっかり寄り添うケアがしたい」と願う経験者層にとって、この自由度の高さが非常に魅力的に映ったのだと思います。
Q2. 開設当初は定期巡回の認知度が低く、利用者様の獲得に苦労されたと伺いました。どのようにして依頼を増やしていったのでしょうか?
前川さま: 私たちが事業を始めた頃、三鷹市には定期巡回の事業所が他に 1 箇所しかなく、地域のケアマネジャーさんすらサービス内容をよく知らない状態でした。最初の 1 ヶ月は利用者様がゼロで、本当に胃が痛くなりました。 そこで、ケアマネジャーさんの「困りごと」を解決する提案に切り替えました。1 日に何度も訪問するようなケースでも「細かいスケジュール調整はこちらで丸ごと引き受けます」とお伝えしてプラン作成の手間を減らす、「日割りも使えるので、退院直後の不安定な時期だけでも使ってみてください」と提案し続けました。そうして困難ケースをお引き受けするうちに、「あそこに頼めば安心だ」と口コミで広がっていきました。
Q3. 経営面についてもお伺いします。開設からどのくらいの期間で収益化できたのでしょうか?
前川さま: 先ほど申し上げた地道な営業活動が実を結び、開設から 7 ヶ月目か 8 ヶ月目くらいには単月の収支がトントン(損益分岐点)に達しました。 現在は定期巡回単体で月に約 410 万円の売上があり、人件費率を 60〜70%程度に抑えることで、毎月 20 万円程度(営業利益率 5%)の利益を出せるようになっています。スタッフに還元しながら、事業を潰さずに継続していくための安定した基盤は作れている状態です。
Q4. 安定した収益を生み出せているポイントはどこにあるとお考えですか?
前川さま: 当社が大切にしているのは、ご自宅での生活が難しく、手厚いサポートを本当に必要としている方を、しっかりとお支えすることです。
退院直後で状態が不安定な方や、重度の方からのご相談を断らず、真摯に向き合ってきた結果、当社の利用者様の平均要介護度は 3.6 となっています。定期巡回は定額制の包括報酬であるため、必要なケアを必要なだけ提供できる仕組みが、重度の方の在宅生活を支えることと非常に親和性が高く、適正な収益にも自然とつながっています。
Q5. 最後に、定期巡回サービスへの転換や参入を検討している法人様へ、メッセージをお願いします。
前川さま: 事業である以上、収益を追うことはもちろん大切ですが、効率化ばかりを追求すると利用者様の満足度は下がってしまいます。かといって時間をかけすぎると事業として成り立たないため、このバランス感覚が非常に重要です。 以前、利用者様が「夕方にラーメンが食べたい」とおっしゃったことがありましたが、定期巡回であれば「じゃあラーメンが伸びないように訪問時間をずらしましょう」と柔軟に調整ができます。スタッフが自律的に動いて楽しみながら働き、利用者様のふとした願いにも応えられる。そんな地域の社会資源として、定期巡回という素晴らしいサービスが適正に広がっていくことを願っています






