サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や在宅向けサービスを運営する中で、利用者様の重度化や多様なニーズにどうお応えしていくか。多くの経営者様が、質の高いケアと事業継続の両立に日々悩まれているのではないでしょうか。
今回は、サ高住の開設に合わせていち早く「定期巡回・随時対応型訪問介護看護(定期巡回サービス)」を導入された社会福祉法人九十九里ホームの理事長の井上様と館長の橋本様に、船井総合研究所の介護経営コンサルタントがお話を伺いました。単独の事業収支にとらわれず、施設全体で高齢者の生活を支え、地域に必要なケアを持続していくための本質的なヒントをお届けします。
事業所紹介
九十九里ホーム定期巡回・随時対応シオン 地域に密着した在宅介護サービス等を通じ、自宅での生活支援を提供。2020 年 2 月にサービス付き高齢者向け住宅(49 床)を開設し、翌 3月に「定期巡回サービス」を立ち上げました。施設内において、訪問介護と定期巡回サービスを柔軟に連携させながら、入居者様が住み慣れた環境で最期まで安心して暮らせるサポート体制を構築されています。
Q&A 形式
Q1船井総研.サ高住の開設とほぼ同時期に「定期巡回サービス」を立ち上げられた経緯を教えていただけますか。
A 井上様. 以前より、地域に根ざした在宅ケアを提供してまいりましたが、2020 年に 49
床のサ高住を開設するにあたり、ある想いがありました。
それは、入居される方の中には、従来の在宅サービスの枠組みだけでは支えきれない、より細やかなサポートが必要な方もいらっしゃるということです。 そうした方々が、生活の場を移しても「自分らしい暮らし」を諦めることなく、これまで通り安心して生活を続けられるようにしたい。その思いから、サ高住の立ち上げとほぼ同時に定期巡回サービスを併設し、本当に支援を必要とする方へ適切なケアをお届けできる体制を整えました。
Q2船井総研.サ高住の中で、訪問介護と定期巡回サービスはどのように使い分けていらっしゃるのでしょうか。
A 井上様・橋本様 入居者様全員に一律で定期巡回サービスをご利用いただくわけではなく、訪問介護をご利用される方もいらっしゃいます。 使い分けの基準としては、例えば「定期的にお薬の確認が必要」といった、1 日に複数回の短いお伺いが必要な方に定期巡回サービスをご提案しています。担当のケアマネジャーやサ高住の現場スタッフが、日常の様子を一番近くで見守っております。
そのため、「この方には定期巡回が合っているのではないか」「訪問看護とも連携した方がより安心ではないか」と、現場のスタッフが主体となって細やかに話し合い、お一人おひとりの状態に合わせた最適な支援へと繋げています。
Q3船井総研.定期巡回サービスを運営する中で、現場が直面している課題などはありますか。
A 井上様. 定期巡回サービスを必要とされるのは、やはり介護度が高い方が中心となります。私たちが手厚いケアで生活を支える一方で、体調を崩されて入院となり、そのままお戻りになれないケースも決して少なくありません。 そうした背景から、利用件数を右肩上がりにどんどん増やしていくことは、現実的に難しい側面があります。
ただ、見方を変えれば、それは現場のスタッフが「本当に支援を必要としている重度の方」へしっかりと寄り添い、最期までケアを届けられている証拠でもあります。数字には表れにくい部分ですが、これこそが私たちが担うべき本来の役割だと捉えています。
Q4 船井総研.質の高いケアを持続していくための、収支や経営面についてはどのようにお考えでしょうか。
A 井上様. 正直に申しますと、定期巡回サービス単体での収支は、トントンといった状況です。本来であれば利用人数が増えるほど経営基盤は安定しやすい仕組みですが、先ほど申し上げた通り重度の方の入院などもあり、単独での収益化は容易ではありません。
しかし、私たちはこの事業を単体で成立させるものとは捉えていません。他の在宅ケアやサ高住など、施設全体・法人全体でバランスを取りながら運営しています。地域の関係機関と密に連携する中で自然とご相談をいただける体制をつくり、何よりも「地域のセーフティネット」としての役割を果たすことが、私たちの最大の使命だと考えています。
Q5船井総研.最後に、定期巡回サービスを通じた今後の展望や、地域への思いをお聞かせください。
A 井上様 「利用者様のために何ができるか」を実直に考えてきた結果が、今の法人の姿に繋がっていると感じています。 定期巡回サービスは、経営的に目覚ましい成果を上げるような派手なモデルではないかもしれません。
しかし、地域で手厚いケアを必要とされている方にとっては、生活を支える「要」となる仕組みです。これからも、目の前の利用者様がどのようなサポートを求めているのかを現場のスタッフと共に見極め、私たちが持つ資源を最大限に活かしながら、地域の方々が安心して暮らし続けられる環境をしっかりと守っていきたいと考えています。






