【事例】従来の在宅ケアの限界を超える「定期巡回サービス」 への参入と、地域を支える柔軟なケアの実現 医療法人 茜会 中野様

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高齢者の在宅生活を 24 時間 365 日支える仕組みとして注目を集める「定期巡回サービス
(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)」。しかし、全国的に見てもまだ参入事業所は少なく、持続可能な運営体制の構築に悩む企業も少なくありません。 今回は、既存の在宅サービスのノウハウとリソースを活かし、いち早く定期巡回サービスに参入された医療法人茜会「24 時間訪問サービスしものせき」の管理者 中野様に、株式会社船井総合研究所の介護経営コンサルタントがお話を伺いました。他の介護サービスからの転換を検討されている方や、地域ニーズと事業継続の両立を目指す経営者様へ、次の一手となるヒントをお届けします。


事業所紹介


医療法人 茜会

24 時間訪問サービスしものせき 山口県下関市にて、外来・在宅・入院の三位一体の総合医療を目指す医療法人茜会が運営。2000 年代から在宅向けの介護事業所を複数展開し、2008 年には下関市で第一号となる夜間対応型サービスを開設。その後、2012年の制度創設に合わせて「定期巡回サービス」へ参入。現在は居宅介護支援や各種在宅サービス、母体の病院などと密に連携しながら、ご高齢者の安心な在宅生活を多角的にサポートしています。


Q&A 形式


Q1船井総研.これまでの在宅介護事業の展開から、定期巡回サービスを開設されるに至った経緯を教えていただけますか。
A 中野様. 私どもは 2000 年から市内に在宅向けの介護事業所を複数開設し、ご自宅での
生活支援を行ってまいりました。その中で「地域の 24 時間ニーズにどうお応えするか」が常に課題であり、2008 年に下関で第一号となる夜間対応型サービスを開設したという背景があります。 ただ、当時の夜間サービス単独では、質の高いケアを持続するための採算面で厳しい状況があったのも事実です。そうした中、2012 年に定期巡回サービスが創設されました。この制度は夜間対応の職員を兼務として活用できる設計であったため、私たちが培ってきた体制を活かしやすい環境でした。日中・夜間を含めた既存のリソースを効果的に活かすことで経営基盤を安定させつつ、ご利用者様や地域の皆様へのサービスの選択肢を広げることができると考え、開設に至りました。


Q2船井総研.従来の他の介護サービスと比較して、定期巡回サービスにはどのような強みや魅力があると感じていらっしゃいますか。
A 中野様. 最大の魅力は、一般的な在宅サービスではお応えするのが難しい「細かなご要望」へ柔軟に寄り添える点です。

たとえば、「特段の身体介護は必要ないけれど、少し様子を見に行ってほしい」「お薬の確認だけしてほしい」といったご相談がよくあります。これまでのケアの枠組みでは、決められた計画や時間のルールに当てはまらないと算定ができず、心苦しくもお断りせざるを得ないケースがありました。

しかし定期巡回サービスであれば、そうした短時間の安否確認や細やかなケアも提供可能です。また、毎日複数回の訪問が必要だった方が、状態が落ち着かれたら他の介護サービスに切り替えるなど、ご本人の状態の変化に合わせてシームレスに支援の形を移行できるのは、安心をお届けする上で大きな強みだと感じています。


Q3船井総研.新たなサービスを始めるにあたり、初期投資の負担や人材確保の面で苦労はありましたか。
A 中野様. 初期投資については、以前から行っていた夜間対応サービスの仕組みや、利用者様にお配りする通報機などの設備をそのまま流用することができたため、それほど大きな費用はかかりませんでした。そういった意味でも、既存の仕組みを活用できたことは参入のハードルを下げてくれました。 人材確保についても、当初は夜間対応の職員を兼務とし、日中は点在していた自社のヘルパー事業所からスタッフに異動してもらうなどして体制を構築しました。

これまで地域で築き上げてきた在宅ケアの基盤があったからこそ、スムーズに事業を立ち
上げることができたと感じています。


Q4 船井総研.質の高いケアを持続していくために、定期巡回サービスを継続・安定させるポイントはどこにあるとお考えですか。

A 中野様. 正直に申しますと、私どもの事業所も完全に軌道に乗っているとは言い切れない部分があり、地域に必要なこのサービスをどう維持していくか、日々模索をしている段階です。 その中で実感しているのは、ご登録いただく「ご利用者様の介護度のバランス」が非常に重要だということです。スタッフがご利用者様としっかり向き合う時間を創出するためには、事業所全体の平均介護度を一定(たとえば要介護 3 以上)に保つなど、受け入れのバランスを意識しながら無理のない運営体制を築くことが鍵になると考えています。


Q5船井総研.最後に、今後定期巡回サービスを通じてどのような地域づくりを目指していきたいか教えてください。
A 中野様. 開設当初から変わらない思いですが、ご高齢者が住み慣れた地域・ご自宅で、一日でも長く安心して生活を送れるようにサポートし続けることです。 私どもの強みは、定期巡回サービスだけでなく、同じ法人内に他の在宅サービス、訪問看護、通所サービス、そして母体となる病院があることです。これからもこれらの事業所と密に連携を取り合いながら、地域に根ざしたトータルケアを提供し、地域で安心して暮らせる高齢者を一人でも多く増やしていけるよう、変わらぬご支援を続けていきたいと考えています