都内で稼働率80%を維持する地域密着型デイサービス
はじめに
近年、全国の半分近くのデイサービスが赤字経営に陥っており、業界全体が厳しい経営に直面しています。稼働率は全国平均で60%代にとどまり、多くの事業所が十分な利用者を確保できず、安定した運営に苦心しているのが実情です。そうした中、今回は地域密着型デイサービスで80%以上の稼働率を維持し続ける合同会社RAGENの飯塚様、鳥居様に取材をさせていただき、都内での地域密着型デイサービス運営のポイントについて伺いました。

◆「介護を必要とする方々に寄り添ったサービスを提供したい」
創業はデイサービスのフランチャイズ開設から始まりました。当初は北区で通常型のお泊りデイサービスとして事業を立ち上げましたが、その後、地域密着型デイサービスへと転換し、現在は北区で地域密着型通所介護事業を展開しています。また他にも、訪問介護事業、居宅介護支援事業、障害者支援事業も手掛けています。
地域密着型通所介護事業について、北区を拠点に選定した理由としては、都内での開設を考えたとき、北区は他の区域と比較して高齢化率が高く、介護サービスを必要としている高齢者が数多くいたからです。高齢化に悩んでいる地域で、「介護を必要とする方々に寄り添ったサービスを提供したい」という思いから、北区での開設を決めました。

◆ひとり一人の要望に応えられることが地域密着型の強み
事業を開設した当初は、とにかく地域からの信頼を得ることを考えていました。周辺地域の関係方々との連携はもちろんですが、その中でも、利用者様ひとり一人の要望に応えることを心掛けていました。例えば、利用者様のご利用時間に関して、事業所としては一日型のタイムスケジュールを組んでいますが、急遽「3時間だけ利用したい」、「昼間だけ利用したい」といった希望がある場合には、それぞれの要望に応じて臨機応変に対応してきました。
こうした方針は現在も変わっていません。新規利用者様が希望される曜日にご案内できなかった場合は、その曜日に空きが出たタイミングですぐにご案内できるようにしています。また、介護度の高い利用者様に対しては、手厚いサービスが提供できるよう、職員数を増やすなど調整しています。
その他、独居の方やご家族の急な予定にも対応できるよう、自費で夕食も提供しています。こうしたサービスは利用者様にご満足いただいており、月間平均で80%以上の稼働率を安定的に維持できています。
利用者様ひとり一人の要望に応えることができるのは、小規模の地域密着型ならではの強みだと思います。そのため、決まったサービスをただ提供しているだけでは「地域に選ばれる事業所」にはなれないと考え、利用者様に寄り添ったサービス提供を心掛けています。
◆事業間連携による集客の安定
会社として複数の介護事業を展開している点は、事業所運営の中でプラスに働いています。特に自社のケアマネジャーから利用者を紹介してもらう体制ができているので、集客数が大きく上下することはありません。また、訪問介護事業においても、利用者様の中にはデイサービスを必要とされている方がいらっしゃいます。そういった場合にはすぐにご案内できるよう、両事業間での連携を整えています。このようにご利用者様のニーズを聞き出せるのも、日頃から利用者様に寄り添ったアプローチを心掛けているからこそだと思います。利用者様の一つ一つのニーズに丁寧に対応することで、ご家族様やケアマネジャーからも信頼していただけるようになるので、好循環につながっています。
◆離職率が低い事業所づくり
職員の雇用については、業界全体で人手不足が叫ばれる中、現在の職員により長く勤務してもらえるよう、職員にとって居心地の良い職場環境づくりに労使一体となって取り組んでおり、その一つとして、シフトについても各職員の家庭事情に合わせて柔軟に対応しています。こうした対応ができるのは、職員と信頼関係を構築できているからこそのメリットだと感じています。人員が決して多いわけではないので、職員一人あたりの負担は少なくありませんが、ほとんどの職員が介護業界に精通しており、フォローできる協調体制を確立しています。職員に最大限の配慮を行うと共に、役職員間の関係性を深めていくことで、できる限り長く当事業所で勤務してもらえるような環境を整えており、年間での離職者を1名以内に留められています。
◆「地域(北区)の利用者様が気軽に集える施設」を目指して
地域密着型デイサービスの運営では、他の介護事業との連携が重要になります。そのため今後も他の介護事業と合わせて、複合的に展開していきたいと考えています。その中でも地域密着型デイサービスは、「近所の利用者様が気軽に集える施設」として、利用者様の社会的孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護負担軽減など役割があり、今後についても利用者様に寄り添いながら、地域に必要とされる事業所を目指していきたいと思っています。そのためには利用者様だけでなく、ご家族とも信頼関係を構築していくことが必要不可欠であり、さらには地域の方々、関係各所と濃密な協調体制を確立することで、地域密着型としてのサービスが成り立つのではないかと思います。
飯塚様、鳥居様、ありがとうございました。