中国介護マーケットの今

2019年11月19日配信

カテゴリ:
介護

皆様、こんにちは。
相変わらず月半分くらいの時間を中国で過ごしております。

今回は、中国の介護市場マーケットの状況について
皆様にお伝えいたします。

10年ほど前から日本介護福祉関連企業の中国進出が年々盛んになり、
皆、口をそろえて言うのが中国の市場マーケットの大きさです。

実際に現在の中国介護市場はどのようなものか?
まず、いくつかの数字を見てみましょう。

 

中国(国家数値統計局)

日本(内閣府)

高齢化社会に
突入した年
(高齢化率)

2000年(7.0%)

1970年(7.1%)

2018

総人口数

139538万人

12642万人

65歳以上人口

(高齢化率)

16658万人 (12%)

3557万人 (28%)

*1990年の高齢化率が12%

平均一人当たりのGDP

9580ドル

39304ドル

*1990年の一人当たりのGDPは25196ドル

平均寿命

77歳

84歳

平均健康寿命

69歳

73歳

平均要支援・要介護の期間

8歳

11歳

(上記の数値はすべて作者が中華人民共和国国家統計局及び日本国内閣府が発表した数値に基づき計算、四捨五入したものです。)

数字から見ると中国の高齢化率は日本の1970年代に相似していますが、
経済大国になった今でもなお平均一人当たりのGDPは低い状態です。
これが中国で言われている“未富先老”問題で、裕福になる前に老いてしまったのです。

日本の多くの方が“中国人はお金持ち”との錯覚を持っているようですが、
実際に海外の皆さんが目にするのは中国のわずか一割の裕福層の実態であり、
残りの九割はまだまだ裕福とは言えない状態にあります。

正当な利益を追及しなければいけない民間企業にとっては高齢者数だけに踊らされずに、
高齢者の中の支払い能力を冷静かつ客観的に見極めることが不可欠です。

“中国人は裕福だから、高くても日本のいいサービスを提供すれば人気施設になるはずだ”は
大きな間違いです。
自費サービスが割合の多くを攻める中国では介護サービスへの支払い能力や意欲に
大きな問題が存在しているため、それが故に、海外の高品質介護技術を導入した
中国の介護会社や中国進出している介護先進国の企業では入居率がよく、
利益を生んでいる成功事例は少ないです。

しかし、“中国でも介護保険が導入されたと聞いたけど?”という方もいるでしょう、
たしかにそうです。

中国政府が2019年11月1日に開示された
第13回中国国家医疗保障局委員会会議の内容があるので、少し和訳しました。

“2016年に政府が15の市と2つの省で試導入された≪長期護理保険≫は順調に導入され、
2019年6月末の時点で、≪長期護理保険≫保険加入数8854万人、
実際に保険を利用した人数42.6万人、平均年間加入金額9200元、
全国平均支払い割合は保険70%、個人負担30%。

今年度の総経理実施制作プランの中にも初めて≪長期護理保険≫のワードが出された。
さらに今後も≪長期護理保険≫を広めていく計画にあり、
特に保険を活用した社区や在宅でのサービス利用を推進していく
今後は保険制度の完備のため、≪日常生活能力診断基準≫や≪長期護理需求認定≫(介護認定)、
≪等級評価基準≫(介護度基準)を整えていく予定。”
※出典:中国国家医療保障局

特に保険を活用した社区や在宅でのサービス利用を推進していく”ここが重要です。

以前のメルマガで、中国では「9073」「9064」の割合があるとお伝えしました。
今後もこそ国家戦略の目標数値が大きく変わることはないでしょう。

中国は今後も介護市場の90%を在宅介護7%/6%を社区介護3%/4%を施設介護
を進めていくはずです。
その中で、≪長期護理保険≫は
“特に保険を活用した社区や在宅でのサービス利用を推進していく”と方針を発表しているのです。
逆に施設介護では今後もほとんどが自費であると読み取ってもいいのではないでしょうか。

私が10月に北京に行った際、長年北京の介護市場を研究している方と交流する機会がありました。
その方によると、北京の入居型施設は約1000施設、そのうち入居型の施設は約500施設あります。
その約500の入居型の介護施設に関しての72施設が満床状態で、そのほかの介護施設は
全部空きがある状態。
満床の施設はたったの14%です。
しかも、72施設のうちの大半が敬老院や福利院と呼ばれている政府系の施設。
要するに平均単価が安く、利益を目的としていない施設です。

中国の介護市場は政府が国家戦略で介護を取り上げて以来、様々な政策の後押しの結果、
市場の需要よりも多くの介護施設が建ってしまい、需要と供給のバランスが崩れている状態。
特に都市部に行けば行くほどこのバランスの乱れが見られます。

“なかなか厳しい市場だね”と感じる方も多いかもしれませんが、
近年では中国での再度日本の介護が注目され、先日も中国の経営者の日本視察をアテンドしました。
やはり日本の在宅サービスや、自立支援、リハビリ、見取り介護、人材育成は大きな可能性があります。

船井総研は2018年から中国市場の調査や研究をはじめ、コンサルとして、
中国の介護企業様のお手伝いをしています。
日本の介護ノウハウを生かし、
コンサルタントとして中国の介護ビジネスモデルを作ることが目標です。

高齢者の老後をサポートし、安心した老後を過ごせるようにするには、
まずサービスを提供する企業が品質の良いサービスを提供し、
利益を生むモデルにしなければなりません。

顧客好、スタッフ好、企業好の三方好を追求先に介護市場の明るい未来がある。
そう信じて、11月22日も中国の上海で研究会を開催いたします。

いつもありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。

この記事を書いたコンサルタント

沓澤 翔太

デイサービス、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの新規開設、収支改善、異業種からの介護事業への新規参入支援などを手がける。現在は、主としてデイサービスや有料老人ホームの利用者獲得や新規開設を中心にコンサルティングを行っている。 介護事業のコンサルティングの他、療養病床の転換や訪問診療など、医療業界のコンサルティングや、医療器具の販売促進についても実績を持つ。

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